<feed xmlns="http://www.w3.org/2005/Atom"><title>Araki Lab in Nara</title><link href="https://araki-lab.amebaownd.com"></link><subtitle>from Nara Women&#39;s University to Nara Medical University</subtitle><id>https://araki-lab.amebaownd.com</id><author><name>araki.lab2019</name></author><updated>2019-05-23T03:43:07+00:00</updated><entry><title><![CDATA[まだまだある？！組織幹細胞を探す]]></title><link rel="alternate" href="https://araki-lab.amebaownd.com/posts/6294122/"></link><id>https://araki-lab.amebaownd.com/posts/6294122</id><summary><![CDATA[-虹彩にある神経幹細胞の新しい性質-はじめに 　　現在の医学・生物学研究の大きなトレンドとして、再生医療を目指す研究を挙げる
ことができる。例えばiPS細胞を用いたヒトへの移植実験はすでに臨床試験がおこなわ
れているし、また今後も種々の疾患治療に期待が持たれている。マスコミ等の取り扱
いを見ていると、少々過度な期待がかけられているように思うが、今のところまだ治
療戦略としての有用性については不明な部分が多い。一方、同じ細胞移植による治療
戦略として、大きな期待がかけられているアプローチに、患者自身の骨髄性間葉系細
胞から誘導された組織細胞を移植する方法があり、すでに脊髄損傷治療で実施され、良好な成績が多数例得られ、保険適応されるとの報道がある。
　　　いずれも細胞移植による治療法であるが、その考え方には根本的な違いがある。iPS
細胞を用いる方法は、体細胞を全能性幹細胞にもどし、それを目的の性質をもつ組織
幹細胞に誘導した上で、移植する(この過程で膨大な時間と費用がかかる)。一方、組
織幹細胞を用いる方法では、例えば骨髄内の間葉組織に存在する幹細胞を利用する。
この細胞は、iPS細胞の様に全能性ではないが、相当の分化レパートリーをもっており、遺伝子導入する必要もなく、安定した培養方法も確立している。また、移植までに
要する時間も実際的である。骨髄間葉系細胞は1990年代半ばにマウスで発見され、神
経組織へ分化することが実験的に示された。それ以来、種々の臨床応用が試みられたが、およそ20年かけて、実地に移されたわけである。この間のさまざまな研究の詳細
はここでは省くが、動物(マウス)実験の研究成果が、多くの研究努力によって、実際
の治療で成果を上げるようになった過程を顧みると、実に多くのことを教えられる。
要するに、動物の再生研究はいずれ臨床的に(全てとは言わないが)応用可能である、ということであろうか。
　　さて、この項で一番言いたいことは、我々の体をつくる組織には、まだまだ未知の
幹細胞、あるいは既知のものであっても未知の機能を持つ幹細胞が存在するのではな
いか、ということである。この一例として、ここでは、目の虹彩組織にある幹細胞に
ついて、我々のラボで明らかにした実験結果を紹介しよう。
　　虹彩は非神経性の組織で、虹彩上皮組織と結合組織に分かれる。そのいずれにも神
経細胞や視細胞に分化する幹細胞が存在することを始めて明らかにした。虹彩は、図
にあるように、角膜のすぐ裏側にあり、外部から非常にアプローチしやすい組織であ
り、人の場合でも容易に採取可能である。また、ブタを使った実験でも、同じ性質を
もつ幹細胞の存在を示すことができており、ヒトにおいてもほぼ同様であろうと推測
することに無理はない。

　ARAKI LABでの研究の流れ研究の契機
　　予期せぬ理由から、修士1年生の石川珠美がニワトリの虹彩上皮組織に存在する神経
幹細胞の研究に取り組むことになった。石川の学部時代の卒研テーマは、「マウス大
脳の神経幹細胞マーカー遺伝子xxxが網膜発生にどのような機能をもつか」であったが
、期待を抱かせた実験結果に再現性がないことがわかり、このテーマを諦めざるを得
なくなった。さて、何をやろうかと思案の結果、以前から気になっていた虹彩組織の
神経幹細胞をターゲットにする事にした。
　院生にどのようなテーマを出すかは、しばしば頭を悩ませる問題である。院生とも
なれば、やれば必ずポジティブな結果が出るような課題は与えたくない、何が出るか
わからない、出すか出さないかは院生次第、そんな課題をだすことを心がけてきたつ
もりである。たとえ思うような結果に至らなくても、如何に考え、行動したか、これ
が研究の意味であると思う。 実験の進行：培養法の開発と成果
　　さて、虹彩幹細胞研究はすでに先行研究がいくつも出ており、確固とした勝算があ
ったわけではないが、何か面白いぞと直感し、このテーマに目をつけた。石川の度重
なる試行錯誤の末、両生類網膜再生の研究で独自に開発したゲル包埋培養を応用して
、トリの虹彩上皮組織を培養した。従来のスタンダードな組織幹細胞から神経誘導を
かけるという培養方法では、うまくいかなかったのである。ゲル包埋法によって、虹
彩上皮細胞を培養に移すと、早いものでは培養開始後24時間以内に神経分化がおこる
ことなどが観察された。
　　これは、従来の虹彩組織幹細胞の実験の結果と比べ、驚くべき結果で、神経細胞誘
導の考え方を根本的に変える結果であると思う(後述)。最近の実験では、神経細胞分
化だけでなく、視細胞(桿状体および錐状体視細胞)も同じく非常に早く分化する事が
わかった。
　　石川に続いて、藤原愛は、虹彩の結合組織にも同様な神経幹細胞が存在し、さらに、
視細胞分化が急速にかつ非常に多数分化することを観察した。以上の成果は、原著論
文として、Experimental Eye Research誌に2014年に公表された。さらに、神経細胞や
視細胞分化の条件を検討するため、16期生の向井春香は卒業研究で、ゲル包埋ではな
く、培養プレート上での平面培養法を検討した。
　　ニワトリ虹彩組織の結果を得て、ブタを用いた実験を企画した。トリで見つかった
現象が、ヒトの器官に近いと言われているブタにおいてもおこるのか、将来の臨床応
用への可能性を考える上では重要なことである。これは、レスター大学からの学部留
学生Lars RoyallおよびDaniel Leaがおこなった。実は、当初あまり期待していなかった

が、ニワトリの結果とほぼ同様の結果が得られ、ブタの虹彩組織にも特異な神経幹細
胞が存在する可能性が強く示唆された。 虹彩幹細胞の分化誘導機構
　　我々が見つけた虹彩幹細胞の特異な性質は何か？それは、先述のように、培養開始
後24時間以内に、神経細胞が分化を開始することである。念のため、再確認しておく
が、虹彩は非神経組織であるので、内在する神経細胞が培養条件下で分化発現したわ
けではない。
　　まず、最初期(24時間後)に分化する神経細胞は、細胞分裂を経ていないものがある
。その後は増殖を経て神経細胞が分化する。通常、組織幹細胞から神経細胞が分化す
る過程では、例えば（これまでの報告では）、回転培養法で細胞凝集塊をつくらせ、
培養液にFGFなど増殖因子、成長因子などを投与する。約1週間（期間は場合により異
なるが）後に、分化因子を投与する。このようにして神経細胞に分化させるためには
、10日〜3週間の培養期間が必要である。それが、今回の手法では、上皮にせよ結合
組織にせよ、24時間後という時間で分化する。
　　そこで、一つの仮説として、虹彩組織内の神経幹細胞には分化抑制機構がはたらい
ており、培養環境に移すことにより、それが解除され、たちまち神経細胞に分化する
。この仮説に従って、WNTに注目して実験をおこなった。WNTアゴニスト、伝達阻害
剤を用いた薬理学実験をおこなった。一方で、組織内には、虹彩の周辺組織であるレ
ンズ組織などは高いWnt合成能が見られる。
　　以上の研究結果が意味するところを現時点で考えてみる。現在は、虹彩組織の神経
分化や視細胞分化は、従来考えられているような、培養の環境操作による幹細胞から
の神経誘導ではなく、幹細胞ニッチからの解放と考えている。もしそうだとするなら
ば、これは、幹細胞に新たな光をあてるものとなり、将来的には他の組織細胞をター
ゲットにして新たな幹細胞を発見することも可能ではないかと、考えている。
　 残されたいくつかの重要な問題
　　また17期生の高橋香奈枝は、ブタの網膜色素上皮と脈絡膜を同様のゲル包埋培養に
より神経分化能を検討した。多数の神経細胞分化が確認されたが、これが脈絡膜の細
胞に由来するのか、色素上皮細胞に由来するかは、培養方法を変えて、今も検討中で
ある。
　　この虹彩組織および、毛様体、さらに脈絡膜などの眼組織中に、神経･網膜幹細胞様
の細胞が広く分布している事の意味は、一体何であろうか。今後どのような答えを見
いだすべきなのか、注意深く考えていきたい。今後は、具体的なシグナル分子に注目
して、組織幹細胞の増殖、分化を制御する機構を明らかにしたいと計画している。 —神経細胞分化する幹細胞はどの組織細胞か。 —分化する神経細胞にはどんなタイプの細胞があるのか？また、それは網膜神経細胞と同一の細胞であるか。 —神経細胞や視細胞(桿状体、錐状体) ]]></summary><author><name>araki.lab2019</name></author><published>2019-05-23T03:43:07+00:00</published><updated>2019-05-30T08:14:57+00:00</updated><content type="html"><![CDATA[
		<div>
			<h4>-虹彩にある神経幹細胞の新しい性質-</h4><p><br></p><h4>はじめに 　</h4><p>　現在の医学・生物学研究の大きなトレンドとして、再生医療を目指す研究を挙げる
ことができる。例えばiPS細胞を用いたヒトへの移植実験はすでに臨床試験がおこなわ
れているし、また今後も種々の疾患治療に期待が持たれている。マスコミ等の取り扱
いを見ていると、少々過度な期待がかけられているように思うが、今のところまだ治
療戦略としての有用性については不明な部分が多い。一方、同じ細胞移植による治療
戦略として、大きな期待がかけられているアプローチに、患者自身の骨髄性間葉系細
胞から誘導された組織細胞を移植する方法があり、すでに脊髄損傷治療で実施され、良好な成績が多数例得られ、保険適応されるとの報道がある。
　　</p><p>　いずれも細胞移植による治療法であるが、その考え方には根本的な違いがある。iPS
細胞を用いる方法は、体細胞を全能性幹細胞にもどし、それを目的の性質をもつ組織
幹細胞に誘導した上で、移植する(この過程で膨大な時間と費用がかかる)。一方、組
織幹細胞を用いる方法では、例えば骨髄内の間葉組織に存在する幹細胞を利用する。
この細胞は、iPS細胞の様に全能性ではないが、相当の分化レパートリーをもっており、遺伝子導入する必要もなく、安定した培養方法も確立している。また、移植までに
要する時間も実際的である。骨髄間葉系細胞は1990年代半ばにマウスで発見され、神
経組織へ分化することが実験的に示された。それ以来、種々の臨床応用が試みられたが、およそ20年かけて、実地に移されたわけである。この間のさまざまな研究の詳細
はここでは省くが、動物(マウス)実験の研究成果が、多くの研究努力によって、実際
の治療で成果を上げるようになった過程を顧みると、実に多くのことを教えられる。
要するに、動物の再生研究はいずれ臨床的に(全てとは言わないが)応用可能である、ということであろうか。
　</p><p>　さて、この項で一番言いたいことは、我々の体をつくる組織には、まだまだ未知の
幹細胞、あるいは既知のものであっても未知の機能を持つ幹細胞が存在するのではな
いか、ということである。この一例として、ここでは、目の虹彩組織にある幹細胞に
ついて、我々のラボで明らかにした実験結果を紹介しよう。
　</p><p>　虹彩は非神経性の組織で、虹彩上皮組織と結合組織に分かれる。そのいずれにも神
経細胞や視細胞に分化する幹細胞が存在することを始めて明らかにした。虹彩は、図
にあるように、角膜のすぐ裏側にあり、外部から非常にアプローチしやすい組織であ
り、人の場合でも容易に採取可能である。また、ブタを使った実験でも、同じ性質を
もつ幹細胞の存在を示すことができており、ヒトにおいてもほぼ同様であろうと推測
することに無理はない。

　</p><p><br></p><h4>ARAKI LABでの研究の流れ</h4><p><b>研究の契機
　</b></p><p>　予期せぬ理由から、修士1年生の石川珠美がニワトリの虹彩上皮組織に存在する神経
幹細胞の研究に取り組むことになった。石川の学部時代の卒研テーマは、「マウス大
脳の神経幹細胞マーカー遺伝子xxxが網膜発生にどのような機能をもつか」であったが
、期待を抱かせた実験結果に再現性がないことがわかり、このテーマを諦めざるを得
なくなった。さて、何をやろうかと思案の結果、以前から気になっていた虹彩組織の
神経幹細胞をターゲットにする事にした。
　院生にどのようなテーマを出すかは、しばしば頭を悩ませる問題である。院生とも
なれば、やれば必ずポジティブな結果が出るような課題は与えたくない、何が出るか
わからない、出すか出さないかは院生次第、そんな課題をだすことを心がけてきたつ
もりである。たとえ思うような結果に至らなくても、如何に考え、行動したか、これ
が研究の意味であると思う。&nbsp;</p><p><br></p><p><b>実験の進行：培養法の開発と成果
</b>　</p><p>　さて、虹彩幹細胞研究はすでに先行研究がいくつも出ており、確固とした勝算があ
ったわけではないが、何か面白いぞと直感し、このテーマに目をつけた。石川の度重
なる試行錯誤の末、両生類網膜再生の研究で独自に開発したゲル包埋培養を応用して
、トリの虹彩上皮組織を培養した。従来のスタンダードな組織幹細胞から神経誘導を
かけるという培養方法では、うまくいかなかったのである。ゲル包埋法によって、虹
彩上皮細胞を培養に移すと、早いものでは培養開始後24時間以内に神経分化がおこる
ことなどが観察された。
　</p><p>　これは、従来の虹彩組織幹細胞の実験の結果と比べ、驚くべき結果で、神経細胞誘
導の考え方を根本的に変える結果であると思う(後述)。最近の実験では、神経細胞分
化だけでなく、視細胞(桿状体および錐状体視細胞)も同じく非常に早く分化する事が
わかった。
　</p><p>　石川に続いて、藤原愛は、虹彩の結合組織にも同様な神経幹細胞が存在し、さらに、
視細胞分化が急速にかつ非常に多数分化することを観察した。以上の成果は、原著論
文として、Experimental Eye Research誌に2014年に公表された。さらに、神経細胞や
視細胞分化の条件を検討するため、16期生の向井春香は卒業研究で、ゲル包埋ではな
く、培養プレート上での平面培養法を検討した。
　</p><p>　ニワトリ虹彩組織の結果を得て、ブタを用いた実験を企画した。トリで見つかった
現象が、ヒトの器官に近いと言われているブタにおいてもおこるのか、将来の臨床応
用への可能性を考える上では重要なことである。これは、レスター大学からの学部留
学生Lars RoyallおよびDaniel Leaがおこなった。実は、当初あまり期待していなかった

が、ニワトリの結果とほぼ同様の結果が得られ、ブタの虹彩組織にも特異な神経幹細
胞が存在する可能性が強く示唆された。</p><p><br></p><p>&nbsp;<b>虹彩幹細胞の分化誘導機構
</b>　</p><p>　我々が見つけた虹彩幹細胞の特異な性質は何か？それは、先述のように、培養開始
後24時間以内に、神経細胞が分化を開始することである。念のため、再確認しておく
が、虹彩は非神経組織であるので、内在する神経細胞が培養条件下で分化発現したわ
けではない。
　</p><p>　まず、最初期(24時間後)に分化する神経細胞は、細胞分裂を経ていないものがある
。その後は増殖を経て神経細胞が分化する。通常、組織幹細胞から神経細胞が分化す
る過程では、例えば（これまでの報告では）、回転培養法で細胞凝集塊をつくらせ、
培養液にFGFなど増殖因子、成長因子などを投与する。約1週間（期間は場合により異
なるが）後に、分化因子を投与する。このようにして神経細胞に分化させるためには
、10日〜3週間の培養期間が必要である。それが、今回の手法では、上皮にせよ結合
組織にせよ、24時間後という時間で分化する。
　</p><p>　そこで、一つの仮説として、虹彩組織内の神経幹細胞には分化抑制機構がはたらい
ており、培養環境に移すことにより、それが解除され、たちまち神経細胞に分化する
。この仮説に従って、WNTに注目して実験をおこなった。WNTアゴニスト、伝達阻害
剤を用いた薬理学実験をおこなった。一方で、組織内には、虹彩の周辺組織であるレ
ンズ組織などは高いWnt合成能が見られる。
　</p><p>　以上の研究結果が意味するところを現時点で考えてみる。現在は、虹彩組織の神経
分化や視細胞分化は、従来考えられているような、培養の環境操作による幹細胞から
の神経誘導ではなく、幹細胞ニッチからの解放と考えている。もしそうだとするなら
ば、これは、幹細胞に新たな光をあてるものとなり、将来的には他の組織細胞をター
ゲットにして新たな幹細胞を発見することも可能ではないかと、考えている。
　</p><p><br></p><p>&nbsp;<b>残されたいくつかの重要な問題
　</b></p><p>　また17期生の高橋香奈枝は、ブタの網膜色素上皮と脈絡膜を同様のゲル包埋培養に
より神経分化能を検討した。多数の神経細胞分化が確認されたが、これが脈絡膜の細
胞に由来するのか、色素上皮細胞に由来するかは、培養方法を変えて、今も検討中で
ある。
　</p><p>　この虹彩組織および、毛様体、さらに脈絡膜などの眼組織中に、神経･網膜幹細胞様
の細胞が広く分布している事の意味は、一体何であろうか。今後どのような答えを見
いだすべきなのか、注意深く考えていきたい。今後は、具体的なシグナル分子に注目
して、組織幹細胞の増殖、分化を制御する機構を明らかにしたいと計画している。&nbsp;</p><p>—神経細胞分化する幹細胞はどの組織細胞か。</p><p>&nbsp;—分化する神経細胞にはどんなタイプの細胞があるのか？また、それは網膜神経細胞と同一の細胞であるか。&nbsp;</p><p>—神経細胞や視細胞(桿状体、錐状体)&nbsp;</p>
		</div>
	]]></content></entry><entry><title><![CDATA[脳の奥深くに潜み、見ないで光を感じる器官の謎]]></title><link rel="alternate" href="https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5976399/"></link><id>https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5976399</id><summary><![CDATA[-第3の目とも言われる松果体と左右の目の関係-研究の概要と奈良女子大学での研究　私が松果体の研究を開始したのは、自治医科大学にいた多分1985年当りであろうと思う。きっかけは、当時岡崎市、基礎生物学研究所にいた渡辺憲二さんの研究である。トリ胚の松果体に、横紋筋に分化する細胞やレンズ細胞に分化する細胞があり、その分化に必要な環境要因を調べておられた。私はその研究がきっかけで、動物の松果体の生理機能を知り、それが種によってずいぶん違うことを知った。特に、それまで網膜視細胞分化の研究をやっていたものだから、松果体の系統発生的な面白さに注目し、しばしば光受容能をもつ魚の松果体からそれをもたない哺乳類松果体に至る過程で一体どのような変化が起こったのか、文献を調べた。こうして、哺乳類以外の動物がもつ松果体の分化能の多様性と動物の脳内での分化特異性を調べることにした。また、魚類から哺乳類の進化の過程で、神経性・光受容性から内分泌性に劇的に機能が変化するのはなぜか、そこにはどのような発生のメカニズムがあるかに興味をもち、研究を始めた。　幸いなことに、研究を始めてすぐに（1986年前後）、ラット松果体細胞の分化能の発現が交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンによって調節されているという観察を得て、いくつかの論文にまとめる事ができた。もともと中枢神経系として発生する器官が末梢神経の入力を受けることは他には見られないユニークな現象であり、この事が松果体の発生運命に関わったのではないかと考えたわけである。これは器官の発生運命を神経が支配していることを意味し、これらの論文は国際的にかなり注目された。その後もトリ胚の松果体細胞の多分化能性と調節について研究を進めた。この一連の研究で得られたアイデアというのは、松果体細胞は、もともと多能的であるが、入力する神経線維の支配によって、分化の方向性が決められると言う、非常にユニークな見方である。つまり、系統進化の過程で、神経支配が次第にシフトし、その結果として、光受容タイプから内分泌タイプに移行したというアイデアである。　奈良女子大では、受け入れる学生の数も限られており、このテーマを卒業研究で実施することはなかったが、外部の研究者を受入れ、また、ドイツのDarmstadt University of Technologyとの共同研究という形で松果体研究を継続した。国際的によく知られた松果体の研究者Chandana HaldarさんがインドBaranasi Hindu Universityから日本学術振興会の研究者として滞在し、ウズラ松果体細胞の分化について細胞培養下で検討した。また、基礎生物学研究所、山森哲夫さんの院生畑克介は、マウス松果体でCNTFが高いレベルで発現する事を見つけ、その意味を探るために、奈良女子大学で研究をおこなった。CNTFが、ノルアドレナリンと同様に細胞分化の特異性を決めることがわかり、これもたいへん面白い結果となって、論文に公表した。ただ、CNTFの生理学的な意味はまだ他にもありそうで、未だに松果体での特異的な発現の意味はよく分からないと思う。　荒木は、2003年からドイツダルムシュタット工科大のPaul Layerラボと共同研究を始め、松果体細胞の多分化能性を細胞の再凝集培養法で検討した。解離した松果体細胞を旋回培養することにより細胞凝集塊を形成させる。これによって高次構造形成能を知ることができる。このようにして、新生子ラット松果体細胞にも一定程度の高次構造（層構造）形成が可能なことを見つけた。最終的には、松果体細胞から網膜組織をつくることを目指したが、より詳細な条件検討が必要である。本研究室の松果体研究の意義　松果体は、圧倒的に生理学的研究、生化学研究が多く、発生学研究は非常に少ない。しかも、ほとんどすべての発生学研究は、正常発生過程の記載学的研究である。発生学者から見て、この器官はそれほど興味をもつものではない。なぜなら、構造はシンプルで、形態形成と呼べるような、組織相互作用（誘導）を伴う大きな形態変化が見られないからである。その意味で、かなりプリミティブな器官であるとも言える。同じような光受容器でありながら、目と松果体はなぜかくも異なるのか？これがいつも私たちが抱いている疑問である。私たちがおこなった初期胚の電子顕微鏡による詳細な観察（自治医大・松原さん、嶋内淑恵、京都府立医大の医大生八幡らによるもの）と器官培養・胚内培養の研究を除いて初期発生の研究はないだろうと思う。私たちの詳細な観察と、実験研究の結果から、松果体原基と表皮間の相互作用が欠如することに意味があると考えることもできる。目の場合は逆にこの相互作用が大きな意味をもつ。これともう一つ、眼胞発生の項で述べた、背と腹のシグナルの相互作用である。松果体は背側シグナルにどっぷりと浸かっている。今後これらの問題を再度調べることにより、松果体の系統進化の問題に迫れると思う。その場合も、常に目の問題を捉えておく必要があるだろう。　私たちの研究は、松果体細胞の多分化能性を通して、器官の発生に、全く別の意味を与えたと言う点で、非常にユニークであると自負している。下等な動物の松果体は、時に、第3の目と呼ばれることがあるが、これは正しい言い方ではなく、目もどきと呼ぶのが正しい。目の形成は、最初のテーマで述べたような、一連の組織相互作用の結果生まれるものである。その点、松果体の発生には、組織相互作用と呼べる現象はまだ明確でない。こういった発生学上の問題を多々残していることからも、謎の器官と言うことができよう。過去調べた限りでは、私たちのグループを除いて、松果体の発生メカニズムの研究は（ほぼ）無かったと思っている。松果体発生過程で、転写因子の遺伝子発現パターンの情報は次第に増えているので、今後は松果体発生の遺伝子レベルの理解が深まるとは思うが、それだけでは不十分であり、まだまだ細胞や組織レベルの発生学的研究が必要である。]]></summary><author><name>araki.lab2019</name></author><published>2019-03-31T01:24:11+00:00</published><updated>2019-05-30T08:12:09+00:00</updated><content type="html"><![CDATA[
		<div>
			<h4>-第3の目とも言われる松果体と左右の目の関係-</h4><p><br></p><p><b>研究の概要と奈良女子大学での研究</b></p><p>　私が松果体の研究を開始したのは、自治医科大学にいた多分1985年当りであろうと思う。きっかけは、当時岡崎市、基礎生物学研究所にいた渡辺憲二さんの研究である。トリ胚の松果体に、横紋筋に分化する細胞やレンズ細胞に分化する細胞があり、その分化に必要な環境要因を調べておられた。私はその研究がきっかけで、動物の松果体の生理機能を知り、それが種によってずいぶん違うことを知った。特に、それまで網膜視細胞分化の研究をやっていたものだから、松果体の系統発生的な面白さに注目し、しばしば光受容能をもつ魚の松果体からそれをもたない哺乳類松果体に至る過程で一体どのような変化が起こったのか、文献を調べた。こうして、哺乳類以外の動物がもつ松果体の分化能の多様性と動物の脳内での分化特異性を調べることにした。また、魚類から哺乳類の進化の過程で、神経性・光受容性から内分泌性に劇的に機能が変化するのはなぜか、そこにはどのような発生のメカニズムがあるかに興味をもち、研究を始めた。</p><p>　幸いなことに、研究を始めてすぐに（1986年前後）、ラット松果体細胞の分化能の発現が交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンによって調節されているという観察を得て、いくつかの論文にまとめる事ができた。もともと中枢神経系として発生する器官が末梢神経の入力を受けることは他には見られないユニークな現象であり、この事が松果体の発生運命に関わったのではないかと考えたわけである。これは器官の発生運命を神経が支配していることを意味し、これらの論文は国際的にかなり注目された。その後もトリ胚の松果体細胞の多分化能性と調節について研究を進めた。この一連の研究で得られたアイデアというのは、松果体細胞は、もともと多能的であるが、入力する神経線維の支配によって、分化の方向性が決められると言う、非常にユニークな見方である。つまり、系統進化の過程で、神経支配が次第にシフトし、その結果として、光受容タイプから内分泌タイプに移行したというアイデアである。</p><p>　奈良女子大では、受け入れる学生の数も限られており、このテーマを卒業研究で実施することはなかったが、外部の研究者を受入れ、また、ドイツのDarmstadt University of Technologyとの共同研究という形で松果体研究を継続した。国際的によく知られた松果体の研究者Chandana HaldarさんがインドBaranasi Hindu Universityから日本学術振興会の研究者として滞在し、ウズラ松果体細胞の分化について細胞培養下で検討した。また、基礎生物学研究所、山森哲夫さんの院生畑克介は、マウス松果体でCNTFが高いレベルで発現する事を見つけ、その意味を探るために、奈良女子大学で研究をおこなった。CNTFが、ノルアドレナリンと同様に細胞分化の特異性を決めることがわかり、これもたいへん面白い結果となって、論文に公表した。ただ、CNTFの生理学的な意味はまだ他にもありそうで、未だに松果体での特異的な発現の意味はよく分からないと思う。</p><p>　荒木は、2003年からドイツダルムシュタット工科大のPaul Layerラボと共同研究を始め、松果体細胞の多分化能性を細胞の再凝集培養法で検討した。解離した松果体細胞を旋回培養することにより細胞凝集塊を形成させる。これによって高次構造形成能を知ることができる。このようにして、新生子ラット松果体細胞にも一定程度の高次構造（層構造）形成が可能なことを見つけた。最終的には、松果体細胞から網膜組織をつくることを目指したが、より詳細な条件検討が必要である。</p><p><br></p><p><b>本研究室の松果体研究の意義</b></p><p>　松果体は、圧倒的に生理学的研究、生化学研究が多く、発生学研究は非常に少ない。しかも、ほとんどすべての発生学研究は、正常発生過程の記載学的研究である。発生学者から見て、この器官はそれほど興味をもつものではない。なぜなら、構造はシンプルで、形態形成と呼べるような、組織相互作用（誘導）を伴う大きな形態変化が見られないからである。その意味で、かなりプリミティブな器官であるとも言える。同じような光受容器でありながら、目と松果体はなぜかくも異なるのか？これがいつも私たちが抱いている疑問である。私たちがおこなった初期胚の電子顕微鏡による詳細な観察（自治医大・松原さん、嶋内淑恵、京都府立医大の医大生八幡らによるもの）と器官培養・胚内培養の研究を除いて初期発生の研究はないだろうと思う。私たちの詳細な観察と、実験研究の結果から、松果体原基と表皮間の相互作用が欠如することに意味があると考えることもできる。目の場合は逆にこの相互作用が大きな意味をもつ。これともう一つ、眼胞発生の項で述べた、背と腹のシグナルの相互作用である。松果体は背側シグナルにどっぷりと浸かっている。今後これらの問題を再度調べることにより、松果体の系統進化の問題に迫れると思う。その場合も、常に目の問題を捉えておく必要があるだろう。</p><p>　私たちの研究は、松果体細胞の多分化能性を通して、器官の発生に、全く別の意味を与えたと言う点で、非常にユニークであると自負している。下等な動物の松果体は、時に、第3の目と呼ばれることがあるが、これは正しい言い方ではなく、目もどきと呼ぶのが正しい。目の形成は、最初のテーマで述べたような、一連の組織相互作用の結果生まれるものである。その点、松果体の発生には、組織相互作用と呼べる現象はまだ明確でない。こういった発生学上の問題を多々残していることからも、謎の器官と言うことができよう。過去調べた限りでは、私たちのグループを除いて、松果体の発生メカニズムの研究は（ほぼ）無かったと思っている。松果体発生過程で、転写因子の遺伝子発現パターンの情報は次第に増えているので、今後は松果体発生の遺伝子レベルの理解が深まるとは思うが、それだけでは不十分であり、まだまだ細胞や組織レベルの発生学的研究が必要である。</p>
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	]]></content></entry><entry><title><![CDATA[神経細胞の遺伝子Neurensinはどんな働きをするのか]]></title><link rel="alternate" href="https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5976365/"></link><id>https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5976365</id><summary><![CDATA[-ヒトの神経系発生異常とNeurensinの関係-Neurensin遺伝子はヒトの神経系疾患で注目されている　過去10年ほどの間に、Neurensin1 (Nrsn1)遺伝子がいくつかの神経疾患と関わっていることが明らかになりつつある。例えば、学習障害やADHDなどの精神疾患や腸管運動を支配する神経の欠如（ヒルシュスプルング病）などである。一方で、Nrsn1のホモログ遺伝子であるNrsn2が発ガンと関わる事を報告した論文がいくつもでている。　これらの研究は、家族性の症例をもとにゲノム解析をおこなうことによって、原因遺伝子をサーチする手法によって、原因となる遺伝子候補をあぶり出すというアプローチである。Neurensin遺伝子とはどんな遺伝子か？　そもそもNeurensinとはどのような遺伝子か。Neurite extension factor genesをNeurensin=Nrsnと呼んでいる。私達が始めて報告したのが1997年で、当時はまだ機能が十分わかっていなかったので、その分子量サイズと神経特異的であることからNeuro-P24と呼んでいた。その名の通り、神経細胞が突起を伸ばす際に機能していると考えられている。その遺伝子産物の特徴は、⑴タンパク質の分子量は24KDaであり、アミノ酸配列から２〜３つの疎水性部分をもつ、膜タンパクであると考えられる。⑵神経組織、神経細胞でだけ発現する。⑶微小管と結合するドメインをもつ唯一の膜タンパクである。また、細胞小器官への輸送シグナルをもつ。⑷神経細胞内の局在は、細胞内、軸索内小胞膜および細胞膜に分布する。⑸発生期や神経軸索再生で、強く発現する。などである。　一方、Nrsn2は、膜タンパクであり、神経細胞にかなり特異的であるが、非神経組織でも発現が見られる。また、Nrsn1のようなはっきりした機能ドメインがみられない。分子量は、Nrsn1より少し大きい（28KDa）。Neurensin研究のきっかけ—偶然のスタート　研究の契機はさまざまだろうが、Neurensin研究に関してはかなり偶然の要素が絡み合っている。　荒木がJT生命誌研究館から京都府立医科大学へ移動して1, 2年後、1995年頃であろうか、山仲間の竹谷茂（当時、関西医科大学）からの連絡で、共同研究をスタートさせた。当時、竹谷は肝臓タンパクの研究をしており、末梢型のbenzodiazepine受容体の脳内発現を調べていた。遺伝子クローニングの過程で、この受容体遺伝子とはほとんど相同性をもたないいくつかのクローンを(多分、偶然に)分離した。そのうちの1つが現在Neurensin1 (Nrsn1)と命名されているもので、当初はNeuro-P24と呼んでいた（機能不明の分子量24Kdタンパクという意味）。この遺伝子がコードするであろうペプチドを合成し、抗体を作成して、マウス脳内分布を調べた。大脳皮質の染色像を顕微鏡で観察したところ、神経生物学の研究者として、吸い込まれるような興味を覚えた。この瞬間から、以来20年以上にわたりNeurensinとのおつき合いである。　顕微鏡下では、大脳皮質錐体ニューロンの樹状突起がものの見事に染色されていた。それも突起内に顆粒状に。直ちに、過去の文献をひたすら調べたが、このようなパターンを示す神経特異タンパクの存在は全く報告がなかった。一方、アミノ酸配列から予想されるタンパク構造も実にユニークである。膜タンパクであり、微小管タンパクチューブリンとの結合ドメインをもつ。このような性質をもつ膜タンパク質は過去に全く知られていない。つまりこの遺伝子がコードするタンパクはどのタンパクとも相同性がなく、新規タンパクである。従って、この遺伝子機能を調べることによって、未だ知られていない神経細胞の姿が分かるかもしれない、そんなワクワクした期待をもって研究に取り組んだ。脳内の各部域を抗体染色し、脳内分布パターンを調べた。当時は機能が分からないため、その分布パターンが何を意味するのか不明であったが、例えばマウスの嗅球、海馬、扁桃核などに強い反応が見られた。以上の報告は、最初の原著論文としと1997年にMolecular Brain Research誌に掲載された。奈良女子大でNeurensin研究を開始—神経突起伸長機能の研究　大阪市立大学の学部生永田兆が卒業研究として京都府立医科大で1年間研究し、さらに奈良女子大学で2年間修士研究をおこなった。永田は、まずNrsn1のモノクローナル抗体作成にチャレンジした。いくつかの有望なクローンを得る事ができたが、残念ながら完全なクローンとして分離することができず、この試みは成功しなかった。その後マウス網膜の発生過程のNrsn1発現の観察や、坐骨神経の軸索再生過程でのNrsn1発現の観察によって、神経細胞が突起を伸ばすときに重要な機能を持つことを示唆する結果を得た。網膜では、長い突起をもつ視神経細胞が特に強い反応を示した。この結果は、原著論文としてExp. Eye Res.誌に公表された。2期生の佐藤裕美子はNrsn1タンパクの脳内分布についてさらに研究した。また、これと並行して３期生の高崎理沙は新たにウサギでポリクローナル抗体の作成を試みた。その脳内パターン、とくに大脳皮質のパターンはNrsn1の分布パターンと類似したものであったが、ウエスタンブロットでは、なぜか38kdにバンドが検出され、24kdよりかなり大きいものであった。なぜこのようなサイズのものを認識するのか、今もって不明である。糖鎖修飾などの問題を検討したが、明確な答えが出ないままである。Nrsn1のニューロン突起伸長機能：Neurensinと名づける　Nrsn1が神経細胞の突起伸長に機能することは培養細胞でも確認された。例えば、COS7細胞に遺伝子強制発現すると、上皮性の細胞が長い突起を伸ばし始め、Nrsn1抗体で陽性の小胞性の反応が突起部に強くでる。そのほか、骨格筋に入力する運動神経軸索では、生後発生に伴って、生後1週間はNrsn1反応性がどんどん強くなり、その後消失する。この時期は軸索末端でシナプス競合と安定化がおこる時期であり、活発な軸索線維の動きを反映したものであると言える。4期生の井田瑞穂がさらにこの問題に取り組んだ。PC12細胞やNeuro2a細胞の神経分化誘導による突起形成では、突起に対応してNrsn1抗体に陽性の膜小胞が多数観察され、特に先端部で陽性小胞と細胞膜との融合が観察された。この他、脊髄神経節細胞での遺伝子発現抑制等、さまざまな細胞レベルの実験の結果、突起伸長機能が確認された。これらの結果は、原著論文として、Neuroscience Research誌に発表された。　さらに、井田瑞穂は新たにクローニングされたNrsn1のホモログ、Nrsn2の脳内分布を調査した。これも、原著論文として公表された。また、6期生の斎藤みほは培養神経細胞に分化誘導をかけたとき、Nrsn1とNrsn2の発現と分布がどのように変化するかを調べ、あらためて突起伸長における機能を明らかにした。2004年に京都で国際会議(解剖学)が開催されたとき、友人のDavid HicksがNrsnに関する研究発表を聞き、分子の名前を提案してくれた。この時から、Neurensin (=neurite extension factor gene)と呼ぶことになり、この名称でNIHのデータベースに登録されている。良い名前で、とても気に入っている。　一方、5期生の鈴木春野は、マウスを用いて、坐骨神経の再生過程を脊髄運動神経細胞に注目して丹念に調べ、細胞体でのNrsn1の発現上昇を運動神経細胞で確認し、軸索再生に機能することを明らかにした。末梢神経軸索再生の研究で、脊髄内細胞体の分子の動態を調べた研究はきわめて少なく、この研究はかなり注目されている。盛岡の遠山縞二郞さん(岩手医大)には脊髄細胞の観察でお世話になった。この成果は、原著論文としてNeuroscience Letter誌に公表された。トリ胚を用いて神経発生におけるNrsn1の機能を調べる試み　これまでの研究でNrsn1が神経突起の伸長過程で機能することがほぼ確認されたので、発生の研究に適したニワトリ胚で研究を始めることにした。この問題には７期生の清永景子が精力的に取り組んだ。まず、ニワトリのNrsn1遺伝子をクローニングし、抗体を作成した。発生中のトリ胚の脳内におけるNrsn1の分布を詳細に調べた結果、中脳と小脳で非常に高いレベルの発現が観察された。中でも、小脳では、プルキニエ細胞にだけ強い反応が観察された。この発現パターンは顕著であり、プルキニエ細胞はその見事な樹状突起の形態でもよく知られている。発生期の活発な樹状突起形成を反映したものであろうと考えられる。さらに、小脳プルキニエ細胞の突起形成におけるNrsn1の機能を調べるために、細胞培養下で遺伝子発現抑制を試みた。これらの結果は、プルキニエ細胞の形態分化にNrsn1が強く関与していることを示すものであり、現在、原著論文としてまとめ、投稿準備中である。このように、細胞形態が示す美しい姿が研究の大きなモチベーションになる事、しばしばである。Nrsnの細胞機能　新しい分子の機能解明がこんな難しいのかと、ときどき放り投げたくなる気持ちになったが、その理由の一つに、なかなか良い抗体を確保できないという問題があった。9期生の森里美は、これまで作成したいくつかの抗体に加えて、アメリカの抗体作成会社から販売されている抗Nrsn1抗体（現在4社から販売されている）の反応性をもう一度洗い直した。これは、12期生の杉山綾も引き継いだ。抗体の反応性が安定しないことには、もしかして何か生理的な理由があるかもしれない。Nrsn1の機能(記憶学習)を考えると、それもあり得ることだとも考えるのだが、その証拠がない。　また、11期生の松尾咲子はNrsn1のC末端ドメイン(オルガネラ輸送タグ)に注目した研究をおこなった。このドメインを欠くと、Nrsn1陽性の膜小胞はあたかもゴルジに閉じ込められたようになる。このドメインを他の神経特異タンパクに接ぎ木してそのタンパクの挙動を調べた。非常にユニークなドメインであり、今後このデータの解析を進めることの意味は大きいと考えている。Nrsn1ノックアウトマウスの作成　より直接的にNrsn1の遺伝子機能を知るため、ノックアウトマウスの作成を試みた。この計画は、奈良女子大の渡邊利雄さんのグループと理研CDB相沢慎一さんの協力を得て実施した。渡邊研の大学院生照屋由里子らの努力により、KOマウスの作成に成功した。Nrsn1遺伝子の脳内発現領域をLacZの発現によって調べると、海馬の神経細胞で非常に強い発現が観察された。この結果は、これまでのin situ hybridizationによるmRNAの発現パターンとも良く一致し、遺伝子の記憶学習機能を強く示唆しており、たいへん興味深い。ただし、KOマウスの脳内神経細胞の樹状突起パターンは、野生型のそれとほとんど変わらず、この結果には少々失望したが、発生期をきちんと調べるなど、今後さらに注意深い検討を要する。また、私たちでは解析することはむずかしいが、行動学的な手法やin vitroでの神経突起伸長の比較なども必要であり、まだ多くの課題が残されている。今後これをどのように継続するのか、あらためて頭が痛い問題である。Neurensin研究のこれから　研究テーマは、研究者にとって自分の子のように可愛いものである。産みの苦しみも、子育てのつらさも、成長した子供を眺める喜びもすべてそこにある。Neurensin研究は、遺伝子の発見から始まったテーマであり、いわば逆遺伝学である。アミン酸配列や構造のユニークさと、脳内分布の美しさから、この遺伝子機能の研究は必ずや大きな意味をもつと信じているが、その一方でなかなか思うような評価を受けないことに（このテーマではついに科研費がとれなかった）、苛立ちを感じ続けてきた。新しいものに対する警戒感なのだろうか、それはそれで健全なことだとは思うが、何と言っても荒木の力不足である。　ここ約10年ほど、Nrsnの文献検索から、たいへん興味深い論文に行き当たった。これが、冒頭述べたヒトの精神疾患のゲノム解析から得られた結果である。特定の染色体領域が突き止められ、それが、Nrsn1が位置する領域、第6染色体6p22である。今のところすぐ隣接する別の遺伝子にも注意が向けられているが、Nrsn1も大いに注目されている。同様の手法から、Nrsn2に関しては、発がん、それも肝臓や消化器ガンとの関連で捉えている論文が複数出ている（がん化に伴う大量の遺伝子の発現検索でひっかかってくる）。　私達が未知の遺伝子に行き当たり、分子細胞生物学の手法によってコツコツと機能解明を進めてきた。一方で、ゲノム解析技術の飛躍的な進歩からヒト疾患の原因遺伝子として注目されるようになった。しかし、特定の遺伝子の変異がなぜこのようなヒトの精神疾患を生じさせるのかは全く不明である。そのためにも、これまで通りの細胞生物学、分子生物学的なアプローチによる遺伝子機能の解明がますます重要である。]]></summary><author><name>araki.lab2019</name></author><published>2019-03-31T01:18:29+00:00</published><updated>2019-05-30T08:13:41+00:00</updated><content type="html"><![CDATA[
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			<h4>-ヒトの神経系発生異常とNeurensinの関係-</h4><p><br></p><p><b>Neurensin遺伝子はヒトの神経系疾患で注目されている</b></p><p>　過去10年ほどの間に、Neurensin1 (Nrsn1)遺伝子がいくつかの神経疾患と関わっていることが明らかになりつつある。例えば、学習障害やADHDなどの精神疾患や腸管運動を支配する神経の欠如（ヒルシュスプルング病）などである。一方で、Nrsn1のホモログ遺伝子であるNrsn2が発ガンと関わる事を報告した論文がいくつもでている。</p><p>　これらの研究は、家族性の症例をもとにゲノム解析をおこなうことによって、原因遺伝子をサーチする手法によって、原因となる遺伝子候補をあぶり出すというアプローチである。</p><p><br></p><p><b>Neurensin遺伝子とはどんな遺伝子か？</b></p><p>　そもそもNeurensinとはどのような遺伝子か。Neurite extension factor genesをNeurensin=Nrsnと呼んでいる。私達が始めて報告したのが1997年で、当時はまだ機能が十分わかっていなかったので、その分子量サイズと神経特異的であることからNeuro-P24と呼んでいた。その名の通り、神経細胞が突起を伸ばす際に機能していると考えられている。その遺伝子産物の特徴は、</p><p>⑴タンパク質の分子量は24KDaであり、アミノ酸配列から２〜３つの疎水性部分をもつ、膜タンパクであると考えられる。</p><p>⑵神経組織、神経細胞でだけ発現する。</p><p>⑶微小管と結合するドメインをもつ唯一の膜タンパクである。また、細胞小器官への輸送シグナルをもつ。</p><p>⑷神経細胞内の局在は、細胞内、軸索内小胞膜および細胞膜に分布する。</p><p>⑸発生期や神経軸索再生で、強く発現する。</p><p>などである。</p><p>　一方、Nrsn2は、膜タンパクであり、神経細胞にかなり特異的であるが、非神経組織でも発現が見られる。また、Nrsn1のようなはっきりした機能ドメインがみられない。分子量は、Nrsn1より少し大きい（28KDa）。</p><p><br></p><p><b>Neurensin研究のきっかけ—偶然のスタート</b></p><p>　研究の契機はさまざまだろうが、Neurensin研究に関してはかなり偶然の要素が絡み合っている。</p><p>　荒木がJT生命誌研究館から京都府立医科大学へ移動して1, 2年後、1995年頃であろうか、山仲間の竹谷茂（当時、関西医科大学）からの連絡で、共同研究をスタートさせた。当時、竹谷は肝臓タンパクの研究をしており、末梢型のbenzodiazepine受容体の脳内発現を調べていた。遺伝子クローニングの過程で、この受容体遺伝子とはほとんど相同性をもたないいくつかのクローンを(多分、偶然に)分離した。そのうちの1つが現在Neurensin1 (Nrsn1)と命名されているもので、当初はNeuro-P24と呼んでいた（機能不明の分子量24Kdタンパクという意味）。この遺伝子がコードするであろうペプチドを合成し、抗体を作成して、マウス脳内分布を調べた。大脳皮質の染色像を顕微鏡で観察したところ、神経生物学の研究者として、吸い込まれるような興味を覚えた。この瞬間から、以来20年以上にわたりNeurensinとのおつき合いである。</p><p>　顕微鏡下では、大脳皮質錐体ニューロンの樹状突起がものの見事に染色されていた。それも突起内に顆粒状に。直ちに、過去の文献をひたすら調べたが、このようなパターンを示す神経特異タンパクの存在は全く報告がなかった。一方、アミノ酸配列から予想されるタンパク構造も実にユニークである。膜タンパクであり、微小管タンパクチューブリンとの結合ドメインをもつ。このような性質をもつ膜タンパク質は過去に全く知られていない。つまりこの遺伝子がコードするタンパクはどのタンパクとも相同性がなく、新規タンパクである。従って、この遺伝子機能を調べることによって、未だ知られていない神経細胞の姿が分かるかもしれない、そんなワクワクした期待をもって研究に取り組んだ。脳内の各部域を抗体染色し、脳内分布パターンを調べた。当時は機能が分からないため、その分布パターンが何を意味するのか不明であったが、例えばマウスの嗅球、海馬、扁桃核などに強い反応が見られた。以上の報告は、最初の原著論文としと1997年にMolecular Brain Research誌に掲載された。</p><p><br></p><p><b>奈良女子大でNeurensin研究を開始—神経突起伸長機能の研究</b></p><p>　大阪市立大学の学部生永田兆が卒業研究として京都府立医科大で1年間研究し、さらに奈良女子大学で2年間修士研究をおこなった。永田は、まずNrsn1のモノクローナル抗体作成にチャレンジした。いくつかの有望なクローンを得る事ができたが、残念ながら完全なクローンとして分離することができず、この試みは成功しなかった。その後マウス網膜の発生過程のNrsn1発現の観察や、坐骨神経の軸索再生過程でのNrsn1発現の観察によって、神経細胞が突起を伸ばすときに重要な機能を持つことを示唆する結果を得た。網膜では、長い突起をもつ視神経細胞が特に強い反応を示した。この結果は、原著論文としてExp. Eye Res.誌に公表された。2期生の佐藤裕美子はNrsn1タンパクの脳内分布についてさらに研究した。また、これと並行して３期生の高崎理沙は新たにウサギでポリクローナル抗体の作成を試みた。その脳内パターン、とくに大脳皮質のパターンはNrsn1の分布パターンと類似したものであったが、ウエスタンブロットでは、なぜか38kdにバンドが検出され、24kdよりかなり大きいものであった。なぜこのようなサイズのものを認識するのか、今もって不明である。糖鎖修飾などの問題を検討したが、明確な答えが出ないままである。</p><p><br></p><p><b>Nrsn1のニューロン突起伸長機能：Neurensinと名づける</b></p><p>　Nrsn1が神経細胞の突起伸長に機能することは培養細胞でも確認された。例えば、COS7細胞に遺伝子強制発現すると、上皮性の細胞が長い突起を伸ばし始め、Nrsn1抗体で陽性の小胞性の反応が突起部に強くでる。そのほか、骨格筋に入力する運動神経軸索では、生後発生に伴って、生後1週間はNrsn1反応性がどんどん強くなり、その後消失する。この時期は軸索末端でシナプス競合と安定化がおこる時期であり、活発な軸索線維の動きを反映したものであると言える。4期生の井田瑞穂がさらにこの問題に取り組んだ。PC12細胞やNeuro2a細胞の神経分化誘導による突起形成では、突起に対応してNrsn1抗体に陽性の膜小胞が多数観察され、特に先端部で陽性小胞と細胞膜との融合が観察された。この他、脊髄神経節細胞での遺伝子発現抑制等、さまざまな細胞レベルの実験の結果、突起伸長機能が確認された。これらの結果は、原著論文として、Neuroscience Research誌に発表された。</p><p>　さらに、井田瑞穂は新たにクローニングされたNrsn1のホモログ、Nrsn2の脳内分布を調査した。これも、原著論文として公表された。また、6期生の斎藤みほは培養神経細胞に分化誘導をかけたとき、Nrsn1とNrsn2の発現と分布がどのように変化するかを調べ、あらためて突起伸長における機能を明らかにした。2004年に京都で国際会議(解剖学)が開催されたとき、友人のDavid HicksがNrsnに関する研究発表を聞き、分子の名前を提案してくれた。この時から、Neurensin (=neurite extension factor gene)と呼ぶことになり、この名称でNIHのデータベースに登録されている。良い名前で、とても気に入っている。</p><p>　一方、5期生の鈴木春野は、マウスを用いて、坐骨神経の再生過程を脊髄運動神経細胞に注目して丹念に調べ、細胞体でのNrsn1の発現上昇を運動神経細胞で確認し、軸索再生に機能することを明らかにした。末梢神経軸索再生の研究で、脊髄内細胞体の分子の動態を調べた研究はきわめて少なく、この研究はかなり注目されている。盛岡の遠山縞二郞さん(岩手医大)には脊髄細胞の観察でお世話になった。この成果は、原著論文としてNeuroscience Letter誌に公表された。</p><p><br></p><p><b>トリ胚を用いて神経発生におけるNrsn1の機能を調べる試み</b></p><p>　これまでの研究でNrsn1が神経突起の伸長過程で機能することがほぼ確認されたので、発生の研究に適したニワトリ胚で研究を始めることにした。この問題には７期生の清永景子が精力的に取り組んだ。まず、ニワトリのNrsn1遺伝子をクローニングし、抗体を作成した。発生中のトリ胚の脳内におけるNrsn1の分布を詳細に調べた結果、中脳と小脳で非常に高いレベルの発現が観察された。中でも、小脳では、プルキニエ細胞にだけ強い反応が観察された。この発現パターンは顕著であり、プルキニエ細胞はその見事な樹状突起の形態でもよく知られている。発生期の活発な樹状突起形成を反映したものであろうと考えられる。さらに、小脳プルキニエ細胞の突起形成におけるNrsn1の機能を調べるために、細胞培養下で遺伝子発現抑制を試みた。これらの結果は、プルキニエ細胞の形態分化にNrsn1が強く関与していることを示すものであり、現在、原著論文としてまとめ、投稿準備中である。このように、細胞形態が示す美しい姿が研究の大きなモチベーションになる事、しばしばである。</p><p><br></p><p><b>Nrsnの細胞機能</b></p><p>　新しい分子の機能解明がこんな難しいのかと、ときどき放り投げたくなる気持ちになったが、その理由の一つに、なかなか良い抗体を確保できないという問題があった。9期生の森里美は、これまで作成したいくつかの抗体に加えて、アメリカの抗体作成会社から販売されている抗Nrsn1抗体（現在4社から販売されている）の反応性をもう一度洗い直した。これは、12期生の杉山綾も引き継いだ。抗体の反応性が安定しないことには、もしかして何か生理的な理由があるかもしれない。Nrsn1の機能(記憶学習)を考えると、それもあり得ることだとも考えるのだが、その証拠がない。</p><p>　また、11期生の松尾咲子はNrsn1のC末端ドメイン(オルガネラ輸送タグ)に注目した研究をおこなった。このドメインを欠くと、Nrsn1陽性の膜小胞はあたかもゴルジに閉じ込められたようになる。このドメインを他の神経特異タンパクに接ぎ木してそのタンパクの挙動を調べた。非常にユニークなドメインであり、今後このデータの解析を進めることの意味は大きいと考えている。</p><p><br></p><p><b>Nrsn1ノックアウトマウスの作成</b></p><p>　より直接的にNrsn1の遺伝子機能を知るため、ノックアウトマウスの作成を試みた。この計画は、奈良女子大の渡邊利雄さんのグループと理研CDB相沢慎一さんの協力を得て実施した。渡邊研の大学院生照屋由里子らの努力により、KOマウスの作成に成功した。Nrsn1遺伝子の脳内発現領域をLacZの発現によって調べると、海馬の神経細胞で非常に強い発現が観察された。この結果は、これまでのin situ hybridizationによるmRNAの発現パターンとも良く一致し、遺伝子の記憶学習機能を強く示唆しており、たいへん興味深い。ただし、KOマウスの脳内神経細胞の樹状突起パターンは、野生型のそれとほとんど変わらず、この結果には少々失望したが、発生期をきちんと調べるなど、今後さらに注意深い検討を要する。また、私たちでは解析することはむずかしいが、行動学的な手法やin vitroでの神経突起伸長の比較なども必要であり、まだ多くの課題が残されている。今後これをどのように継続するのか、あらためて頭が痛い問題である。</p><p><br></p><p><b>Neurensin研究のこれから</b></p><p>　研究テーマは、研究者にとって自分の子のように可愛いものである。産みの苦しみも、子育てのつらさも、成長した子供を眺める喜びもすべてそこにある。Neurensin研究は、遺伝子の発見から始まったテーマであり、いわば逆遺伝学である。アミン酸配列や構造のユニークさと、脳内分布の美しさから、この遺伝子機能の研究は必ずや大きな意味をもつと信じているが、その一方でなかなか思うような評価を受けないことに（このテーマではついに科研費がとれなかった）、苛立ちを感じ続けてきた。新しいものに対する警戒感なのだろうか、それはそれで健全なことだとは思うが、何と言っても荒木の力不足である。</p><p>　ここ約10年ほど、Nrsnの文献検索から、たいへん興味深い論文に行き当たった。これが、冒頭述べたヒトの精神疾患のゲノム解析から得られた結果である。特定の染色体領域が突き止められ、それが、Nrsn1が位置する領域、第6染色体6p22である。今のところすぐ隣接する別の遺伝子にも注意が向けられているが、Nrsn1も大いに注目されている。同様の手法から、Nrsn2に関しては、発がん、それも肝臓や消化器ガンとの関連で捉えている論文が複数出ている（がん化に伴う大量の遺伝子の発現検索でひっかかってくる）。</p><p>　私達が未知の遺伝子に行き当たり、分子細胞生物学の手法によってコツコツと機能解明を進めてきた。一方で、ゲノム解析技術の飛躍的な進歩からヒト疾患の原因遺伝子として注目されるようになった。しかし、特定の遺伝子の変異がなぜこのようなヒトの精神疾患を生じさせるのかは全く不明である。そのためにも、これまで通りの細胞生物学、分子生物学的なアプローチによる遺伝子機能の解明がますます重要である。</p><p><br></p>
		</div>
	]]></content></entry><entry><title><![CDATA[傷ついた網膜を再生する事は可能か？]]></title><link rel="alternate" href="https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5971069/"></link><id>https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5971069</id><summary><![CDATA[-両生類に学ぶ網膜を再生する仕組み-両生類網膜再生研究の契機　有尾両生類イモリは、非常に強い器官再生能をもつ動物としてよく知られており、中でも水晶体の再生研究は、発生学研究において、学術的に重要な成果を生み出してきた。荒木が大学院で学んだ岡田研究室では、1974年当時、助教授の江口吾朗さんがこの問題に精力的に取り組んでいた。江口さんは戦後の名古屋大学で佐藤忠男さんの元で学び、その佐藤は戦前のドイツ留学で長らくシュペーマンの元でレンズ再生の研究をおこなった。一方、岡田さんらは、イモリのレンズ再生をニワトリ胚でも再現できないかと、培養したトリ胚の色素上皮細胞がレンズ細胞に分化する現象に取り組んでいた。クローン培養によって、トリ胚色素上皮細胞がレンズ細胞に分化することを証明し、これを分化転換現象transdifferentiationと名づけた。　その頃、荒木が取り組んだテーマは、初期トリ胚の網膜が培養下で色素上皮とレンズ細胞に分化することを分子的に調べることであった。トリ胚における分化転換や異分化現象はいずれも細胞培養下での現象である。荒木は、培養細胞の研究に惹かれながらも、イモリレンズ再生のように、実際に動物の体の中で起こる現象に強く興味を感じていた。　1998年に奈良女子大で新しく研究室を立ち上げることになった時、大学院の頃から頭から離れなかったイモリの再生現象を解析することにした。これに先立つ1988年にカナダのグループがトリ初期胚の眼球内で網膜色素上皮から網膜が再生することを報告しており、この時、FGF2が再生を誘導することが示された。荒木は、この現象に強く惹かれ、自治医大在職時の1992年、トロントからバンクーバーのUniversity of British Columbiaへ移ったCarol Parkの研究室に滞在し、実験をおこなった(ここは、1983年〜1984年、Kinsmen Institute of Neurological Scienceで神経科学の研究をおこなった場所でもある)。さらに、京都府立医科大学へ移動後は、前述のウズラSilver変異の解析を通して、色素上皮→網膜転換の現象を対象に研究をおこなった。　以上のような荒木個人の研究史を背景に、奈良女では、あらためてイモリの網膜再生に着手することにした。やはり、成熟した動物個体の中でおこる再生現象に強い興味をもった。当時、すでに国内では筑波大学と大阪大学のグループがイモリ網膜再生の研究をかなり進めており、はたして、彼らとは違う色が出せるのか、不安もあった。当面は、現象の理解が必要であり、面倒でも形態学をしっかりやっておこうと考えて網膜再生過程の詳細な観察を心がけた。研究室１期生の池上陽子は、名古屋大学岡本光正さんの元で必要な手技を学び、イモリの網膜除去の外科手術に習熟し、多数の個体で顕微鏡標本を作製して、再生を確認した。再生過程の光顕標本を観察しているととても面白く、なぜこんなふうに再生するのだろうか、いろいろな問題が次から次へと頭をよぎった。当時の岡本さんは、イモリのレンズ再生に熱心に取り組んでいた。　このようにして奈良女でスタートした網膜再生研究であるが、他の先行グループとは如何に違う色をだすか、これがもっとも大きな課題であった。イモリの色素上皮器官培養をつくる　当時、両生類の細胞培養はかなりむずかしいと言われていた。実際にそのような試みはあったが、網膜再生を再現できたと言えるような培養実験系はまだ確立していなかった。そんな中、本研究室では、池上が、黒い色素上皮細胞が安定して神経細胞に分化する培養法の開発に取り組んだ。これが今も本研究室で使われているミリカップ組織培養である。組織をばらばらの細胞に単離せず、色素上皮シートと脈絡膜をつけたまま培養する方法である。ごく簡単な方法であるが、これによって、色素上皮細胞が神経細胞に分化する全過程を連続的に調べることができるようになった。培養下でイモリの網膜再生をきちんと再現できた最初の報告として、2002年Journal of Neurobiology誌に掲載された。2期生の柴本佳緒里は培養法の改良に取り組んだ。　続いて、この器官培養を用いて、さまざまな解析をおこなった。特に、3期生の満田早苗や４期生の奥知美が関わったのは、イモリの色素上皮から神経細胞の分化（転換）に、FGFが関わっているかどうかという問題であった。色素上皮を結合組織から分離して培養し、FGF2の関与を明らかにした。この他、FGF2に対する応答能が培養経過にともない失われることが明らかになった。これらの結果は、色素上皮細胞の動的な姿を理解する上で非常に重要な結果であり、成果は2005年Developmental Biology誌に発表された。　成体のアフリカツメガエルで網膜が再生することを発見　器官培養でイモリ網膜再生を解析したことで、本研究室は他の研究室にはないオリジナルな系をもつことになった。さらに研究を進めるには、再生の引き金となる分子FGF2に注目し、これが色素上皮細胞に何を指示するのか、をより詳細に調べる必要がある。この時、1つユニークな展開を思いついた。それは、網膜再生が確実におこる動物イモリと再生しない動物カエルを比較することである。その比較によって、再生には何が必要なのかをより明確にできる。そこで、同じ両生類でも、変態後には網膜再生がおこらないとされていたアフリカツメガエルを用いた。器官培養という全く同じ条件でこの2つの両生類を比較すれば、分子的な解析も十分可能である。この問題に積極的に取り組んだのが、５期生の吉井千夏である。ツメガエルは両生類のモデル生物でもある。　不思議なことに、アフリカツメガエルの色素上皮からも神経細胞が分化した。つまり、器官培養という条件では、イモリもカエルも同じように再生することになる。これは意外な結果であると同時に、1つの新しい可能性が考えられた。すなわち、カエルでは、成体の目の中では再生しないが、培養環境では再生する可能性である。もう一つは、これまでの定説が間違っており、実は成体のアフリカツメガエルでも再生するという見方である。そこで、吉井は、優れたオペの腕を発揮して、カエルの網膜除去手術を多数実施し、丹念に組織切片を作成して詳細に検討した。その結果、色素上皮細胞は、元の位置から硝子体に残置された血管膜へ移動し、そこで再度上皮形成し、次に網膜組織へ分化することなどが明らかになった。　この発見にはいくつか重要な意味がある。なかでも、定説を覆したこと、種の壁を超えたことである。イモリだけが網膜完全再生する動物ではないこと、ツメガエルという両生類のモデル動物が再生研究に利用できる。このように種の壁を越えることによって、今後はさらに両生類を超えて、例えば哺乳類でも再生が可能かもしれないという夢を持たせてくれるのではないだろうか。この結果は、原著論文として2007年Developmental Biology誌に掲載された。研究室の論文の中で非常に被引用数の高い論文である。アフリカツメガエルの器官培養系で再生過程を解析する　イモリで研究するか、アフリカツメガエルで研究するか、なかなか判断が難しかった。しかし、他の先行グループがイモリを対象にしていることや、アフリカツメガエルの網膜再生は新しい発見であり、ある程度有利さを保てるとの判断からアフリカツメガエルで研究を続けることにした。結果的にはこれが良かったと思う。　しかし、なかなかことは思うようには進まない。しばらくは、イモリとカエルの間を行ったり来たり、と言う状態であった。6期生の菊川智代は、イモリ網膜再生にはFGF2だけでなく、IGF1を加えることにより促進効果があることに注目し、これらの増殖因子が由来すると考えられる脈絡膜の働きを調べた。さらに、IGF1の脳内分布について調べた。また、7期生の中村曜子は両種の比較を詳細におこなった。さらに、8期生の吉川仁恵はイモリFGF2に対する特異抗体を使って、FGF2が確かに脈絡膜に由来することを確認した。この抗体がカエルには使えないのが残念であったが、培養と目の組織の研究によって、FGF2が実際に再生因子である事が強く示された。　さらに、アフリカツメガエルで本格的に、網膜再生メカニズムの解析を進めた。それにはやはり培養系だ、と考え、特に色素上皮細胞が分化転換して網膜神経細胞に分化する過程(分化転換)に注目して研究を進めた（もう一つの再生起源細胞である毛様体の細胞に関しては未だに解析に至っていない）。培養に関しては、2つの系を開発した。このテーマには、７期生の栗山英子、10期生の西林知里らが取り組んだ。1つはこれまでのミリカップ膜上に組織を置いて培養する方法、これは細胞の変化を顕微鏡下で連続して追跡が可能である。もう一つの方法は、この組織の上からゲル(マトリゲル)をかけ、包み込んで培養する方法。この方法では、色素上皮が網膜組織そのものを構築･再生することが可能であり、ほぼ目の中の再生を再現しているとも言える。ただ、ゲル内部の変化であるので、切片を切ることによってのみ現象の把握が可能である。これらの培養系を用い、さらに方法に改良を加えながら、それぞれ独自の方向へ展開した。これらの研究は、原著論文として報告され、その後の研究の基礎となった。　培養に関しては、さらに新しい系づくりを試みた。これまでの培養はいずれも色素上皮細胞が神経分化する系である。逆に、色素上皮としての性質を保ち続け、神経分化しない系があれば、分化誘導環境の解析に応用できる。この取り組みは17期生の西野なつ美が実施し、通常のプラスチック培養プレートで培養すると、ほとんど神経分化がおこらない、また色素上皮細胞は上皮性をいつまでも維持することなどが明らかになった。この問題は後述の細胞接着と遺伝子発現の問題ともつながる。トランスジェニックツメカエルの開発　培養手法を開発するとともに、カエルの遺伝子導入個体（トランスジェニック動物）の作成に取り組んだ。これには、修士修了後に大阪大学近藤研で手法を学んだ上田陽子（旧姓池上）が、技術支援員として復帰し、大いにその腕を見せてくれた。その結果、EF1a promoterにEGFP遺伝子をつなぐことにより遺伝子発現を直接可視化できるアフリカツメガエルのF1およびF2世代を作成することができた。アフリカツメガエルの世代交代は長い時間がかかる（年単位！）ので、何とも気の長い仕事になったが、これにより両生類網膜再生に初めてトランスジェニック技術が応用されたことになる。さらに、10期生の鍋島彩佳は、Rax promoterにEGFP遺伝子をつないだ個体を作成し、網膜再生に重要な鍵となる遺伝子Raxがどのような細胞環境で発現するのか、とくに細胞—基質間、および細胞—細胞間相互作用に注目して研究を進めた。これらの研究によって、どのような環境変化をきっかけにして色素上皮細胞が分化転換過程に入るのか、次第に明らかになってきた。これらの研究成果は、原著論文としてGenesisに報告された。　たまたま旧知の名古屋大学尾張部克志さんがイモリ網膜のモノクローナル抗体を作成していると知り、それが再生に使えないか、を調べることにした。これは、11期生の護城明子と13期生の前島弘奈が取り組み、網膜除去後急速に抗体反応性が上昇するモノクローナル抗体を捕まえた。残念ながらその抗原性を明らかにするまでには至ってないが、そのサイズからPax6のサブタイプかもしれないと考えている。再生の分子機構の提案　先述の培養モデルの研究から、いくつかの再生モデルと言うべきアイデアが出された。それは、目の中の再生過程と器官培養の結果を比較検討する事により生まれたものである。目の中では、網膜を外科的に除去すると、色素上皮細胞は血管膜に移動し、そこで上皮を再形成する。この上皮組織は次第に神経上皮へと変わり、網膜が再生する。つまり、色素上皮細胞は、移動→上皮再形成→神経上皮形成というステップを経る。ミリカップ上での色素上皮細胞の振る舞いも、ある意味このステップを再現しているとも言える。つまり、培養片をミリカップ上に置くと、色素上皮細胞は培養片の周辺部から這いだし（移動し）、移動後上皮を再形成する。さらにその先で、上皮細胞間接着を失い、ばらばらになって神経細胞に分化する。この一連の過程を、上皮間の接着構造と網膜発生に必須の遺伝子発現を調べることによって、再生過程における細胞間コミュニケーションと再生遺伝子発現の問題として捉えようとしたのが、博士課程に復帰した上田陽子である。上田は同一の培養標本で、いくつものマーカーを同時に検出することにより、これらの対応関係を鮮やかに解明した。また、このような現象が実際に目の中の再生過程でも見られるのかどうかを、13期生の藤田悠里は詳細に観察した。培養での解析には、15期生の勅使河原利香も取り組み、ツメガエル2種(後述のネッタイツメガエル)の比較検討をおこなった。現時点では、細胞間連絡と分化転換の因果関係を問うことはまだむずかしいが、これらの成果は、再生ステップの細胞機構の問題に深く切り込んだ研究である。今後はこの因果関係を解明することが大きな問題として残されており、これによって再生の問題が格段にクリアになると思う。　色素上皮細胞が分化転換し網膜細胞に分化する過程では、当然エピジェネティックな調節が予想される。いつどのような調節があるのか、これを知ることは再生ステップをより詳細に知るために重要であろう。卒研14期生の奧原絵菜は、この問題を奈良先端大の荻野ラボで研究した。特に、須藤則広さんには丁寧にご指導いただいた。　もう一つの攻めるポイントは、再生開始のトリガーに焦点を絞ることである。つまり、網膜を外科的に除去すると網膜再生が開始する（色素上皮細胞が移動を始める）が、網膜を除かない限り、このような細胞の移動･再生は決しておこらない。網膜除去という操作がなぜ再生のトリガーになるのか、という問題である。この問題は、14期生の内藤華子が熱心に取り組んだ。培養での研究がヒントになり、作業仮説として次のように考えた。まず、外科手術によって網膜を除去すると、炎症性反応が脈絡膜内でおこり（脈絡膜は非常に血管の豊富な組織であるため）、その結果protease が活性化し、色素上皮細胞が基底膜から遊離する、と予想した。そこで、まず基質を分解する酵素群MMP (Matrix metalloproteinases)の発現が外科操作に伴いどのように変化するかをqPCRで調べたところ、24時間以内に極めて高いレベルに達することがわかった。培養下でも移動開始の細胞でMMPのｍRNAが高いレベルになる事、またMMP活性を阻害すると、移動がおこらず神経細胞分化もおこらないことなどが明らかになった。はたして炎症によってMMPの発現が誘導されるのかどうか、現在17期生の菅沼佑香里が抗炎症剤を用いて調べているところである。なお、MMPのPCRによる解析や細胞内局在の検出に関して、京都大学再生医学研究所の瀨原淳子さんのラボにご厄介になった。特に、佐藤貴彦さんにはたいへんお世話になた。新しいツメガエル再生モデル（ネッタイツメガエル）の開発　近年、ネッタイツメガエルが両生類の新しい実験モデルとして注目されている。アフリカツメガエルとは近縁でありながら、いくつもの利点をもち、最近では全ゲノム解読もされた。世代交代が早く、また二倍体であるため厳密な遺伝学が可能である。私たちは、将来の遺伝子導入個体の作成も視野に入れて、ネッタイツメガエルでも網膜が再生するのかどうかを確認しようとした。再生しなければ、研究の対象とはならないが、逆に、なぜ再生しないのかと問うことにも意味がある。このテーマには、12期生の三宅あゆ美が熱心に取り組んだ。これまで同様、網膜を全て除去したところ、やはりきれいな網膜再生が観察された。ところが、目の中の再生、器官培養での再生、いずれもアフリカツメガエルとは異なる、興味深い結果が得られた。再生の起源となるのは色素上皮ではなく、毛様体辺縁部の幹細胞である。この細胞群が急速に増殖し、新しい増殖帯を形成して網膜を分化する。培養下でも調べたが、目の中と同様に、色素上皮は神経細胞には分化しない。この観察の意味は大きい。なぜなら、哺乳類を含めほぼすべての動物の毛様体には幹細胞があると考えられる。従って、毛様体組織の幹細胞を何らかの方法で活性化させることにより哺乳類で再生誘導することももあながち夢だとは言い切れない。　ネッタイツメガエルでは、アフリカツメガエルで観察された、色素上皮細胞の移動→上皮再形成→神経上皮形成というステップを経ず、上皮再形成がおこらない。これら2種の詳細な比較研究は、上田および勅使河原によって検討されている。　なお、これまで色素上皮細胞の分化転換過程を重点的に解析してきたが、もう一つの再生起源細胞である毛様体辺縁部の幹細胞については、16期生の鈴木絢診が研究をおこなった。これには今後の問題として、例えば培養下での解析等が必要であると思う。]]></summary><author><name>araki.lab2019</name></author><published>2019-03-31T01:10:56+00:00</published><updated>2019-05-30T08:13:59+00:00</updated><content type="html"><![CDATA[
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			<h4>-両生類に学ぶ網膜を再生する仕組み-</h4><p><br></p><p><b>両生類網膜再生研究の契機</b></p><p>　有尾両生類イモリは、非常に強い器官再生能をもつ動物としてよく知られており、中でも水晶体の再生研究は、発生学研究において、学術的に重要な成果を生み出してきた。荒木が大学院で学んだ岡田研究室では、1974年当時、助教授の江口吾朗さんがこの問題に精力的に取り組んでいた。江口さんは戦後の名古屋大学で佐藤忠男さんの元で学び、その佐藤は戦前のドイツ留学で長らくシュペーマンの元でレンズ再生の研究をおこなった。一方、岡田さんらは、イモリのレンズ再生をニワトリ胚でも再現できないかと、培養したトリ胚の色素上皮細胞がレンズ細胞に分化する現象に取り組んでいた。クローン培養によって、トリ胚色素上皮細胞がレンズ細胞に分化することを証明し、これを分化転換現象transdifferentiationと名づけた。</p><p>　その頃、荒木が取り組んだテーマは、初期トリ胚の網膜が培養下で色素上皮とレンズ細胞に分化することを分子的に調べることであった。トリ胚における分化転換や異分化現象はいずれも細胞培養下での現象である。荒木は、培養細胞の研究に惹かれながらも、イモリレンズ再生のように、実際に動物の体の中で起こる現象に強く興味を感じていた。</p><p>　1998年に奈良女子大で新しく研究室を立ち上げることになった時、大学院の頃から頭から離れなかったイモリの再生現象を解析することにした。これに先立つ1988年にカナダのグループがトリ初期胚の眼球内で網膜色素上皮から網膜が再生することを報告しており、この時、FGF2が再生を誘導することが示された。荒木は、この現象に強く惹かれ、自治医大在職時の1992年、トロントからバンクーバーのUniversity of British Columbiaへ移ったCarol Parkの研究室に滞在し、実験をおこなった(ここは、1983年〜1984年、Kinsmen Institute of Neurological Scienceで神経科学の研究をおこなった場所でもある)。さらに、京都府立医科大学へ移動後は、前述のウズラSilver変異の解析を通して、色素上皮→網膜転換の現象を対象に研究をおこなった。</p><p>　以上のような荒木個人の研究史を背景に、奈良女では、あらためてイモリの網膜再生に着手することにした。やはり、成熟した動物個体の中でおこる再生現象に強い興味をもった。当時、すでに国内では筑波大学と大阪大学のグループがイモリ網膜再生の研究をかなり進めており、はたして、彼らとは違う色が出せるのか、不安もあった。当面は、現象の理解が必要であり、面倒でも形態学をしっかりやっておこうと考えて網膜再生過程の詳細な観察を心がけた。研究室１期生の池上陽子は、名古屋大学岡本光正さんの元で必要な手技を学び、イモリの網膜除去の外科手術に習熟し、多数の個体で顕微鏡標本を作製して、再生を確認した。再生過程の光顕標本を観察しているととても面白く、なぜこんなふうに再生するのだろうか、いろいろな問題が次から次へと頭をよぎった。当時の岡本さんは、イモリのレンズ再生に熱心に取り組んでいた。</p><p>　このようにして奈良女でスタートした網膜再生研究であるが、他の先行グループとは如何に違う色をだすか、これがもっとも大きな課題であった。</p><p><br></p><p><b>イモリの色素上皮器官培養をつくる</b></p><p>　当時、両生類の細胞培養はかなりむずかしいと言われていた。実際にそのような試みはあったが、網膜再生を再現できたと言えるような培養実験系はまだ確立していなかった。そんな中、本研究室では、池上が、黒い色素上皮細胞が安定して神経細胞に分化する培養法の開発に取り組んだ。これが今も本研究室で使われているミリカップ組織培養である。組織をばらばらの細胞に単離せず、色素上皮シートと脈絡膜をつけたまま培養する方法である。ごく簡単な方法であるが、これによって、色素上皮細胞が神経細胞に分化する全過程を連続的に調べることができるようになった。培養下でイモリの網膜再生をきちんと再現できた最初の報告として、2002年Journal of Neurobiology誌に掲載された。2期生の柴本佳緒里は培養法の改良に取り組んだ。</p><p>　続いて、この器官培養を用いて、さまざまな解析をおこなった。特に、3期生の満田早苗や４期生の奥知美が関わったのは、イモリの色素上皮から神経細胞の分化（転換）に、FGFが関わっているかどうかという問題であった。色素上皮を結合組織から分離して培養し、FGF2の関与を明らかにした。この他、FGF2に対する応答能が培養経過にともない失われることが明らかになった。これらの結果は、色素上皮細胞の動的な姿を理解する上で非常に重要な結果であり、成果は2005年Developmental Biology誌に発表された。</p><p>　</p><p><b>成体のアフリカツメガエルで網膜が再生することを発見</b></p><p>　器官培養でイモリ網膜再生を解析したことで、本研究室は他の研究室にはないオリジナルな系をもつことになった。さらに研究を進めるには、再生の引き金となる分子FGF2に注目し、これが色素上皮細胞に何を指示するのか、をより詳細に調べる必要がある。この時、1つユニークな展開を思いついた。それは、網膜再生が確実におこる動物イモリと再生しない動物カエルを比較することである。その比較によって、再生には何が必要なのかをより明確にできる。そこで、同じ両生類でも、変態後には網膜再生がおこらないとされていたアフリカツメガエルを用いた。器官培養という全く同じ条件でこの2つの両生類を比較すれば、分子的な解析も十分可能である。この問題に積極的に取り組んだのが、５期生の吉井千夏である。ツメガエルは両生類のモデル生物でもある。</p><p>　不思議なことに、アフリカツメガエルの色素上皮からも神経細胞が分化した。つまり、器官培養という条件では、イモリもカエルも同じように再生することになる。これは意外な結果であると同時に、1つの新しい可能性が考えられた。すなわち、カエルでは、成体の目の中では再生しないが、培養環境では再生する可能性である。もう一つは、これまでの定説が間違っており、実は成体のアフリカツメガエルでも再生するという見方である。そこで、吉井は、優れたオペの腕を発揮して、カエルの網膜除去手術を多数実施し、丹念に組織切片を作成して詳細に検討した。その結果、色素上皮細胞は、元の位置から硝子体に残置された血管膜へ移動し、そこで再度上皮形成し、次に網膜組織へ分化することなどが明らかになった。</p><p>　この発見にはいくつか重要な意味がある。なかでも、定説を覆したこと、種の壁を超えたことである。イモリだけが網膜完全再生する動物ではないこと、ツメガエルという両生類のモデル動物が再生研究に利用できる。このように種の壁を越えることによって、今後はさらに両生類を超えて、例えば哺乳類でも再生が可能かもしれないという夢を持たせてくれるのではないだろうか。この結果は、原著論文として2007年Developmental Biology誌に掲載された。研究室の論文の中で非常に被引用数の高い論文である。</p><p><br></p><p><b>アフリカツメガエルの器官培養系で再生過程を解析する</b></p><p>　イモリで研究するか、アフリカツメガエルで研究するか、なかなか判断が難しかった。しかし、他の先行グループがイモリを対象にしていることや、アフリカツメガエルの網膜再生は新しい発見であり、ある程度有利さを保てるとの判断からアフリカツメガエルで研究を続けることにした。結果的にはこれが良かったと思う。</p><p>　しかし、なかなかことは思うようには進まない。しばらくは、イモリとカエルの間を行ったり来たり、と言う状態であった。6期生の菊川智代は、イモリ網膜再生にはFGF2だけでなく、IGF1を加えることにより促進効果があることに注目し、これらの増殖因子が由来すると考えられる脈絡膜の働きを調べた。さらに、IGF1の脳内分布について調べた。また、7期生の中村曜子は両種の比較を詳細におこなった。さらに、8期生の吉川仁恵はイモリFGF2に対する特異抗体を使って、FGF2が確かに脈絡膜に由来することを確認した。この抗体がカエルには使えないのが残念であったが、培養と目の組織の研究によって、FGF2が実際に再生因子である事が強く示された。</p><p>　さらに、アフリカツメガエルで本格的に、網膜再生メカニズムの解析を進めた。それにはやはり培養系だ、と考え、特に色素上皮細胞が分化転換して網膜神経細胞に分化する過程(分化転換)に注目して研究を進めた（もう一つの再生起源細胞である毛様体の細胞に関しては未だに解析に至っていない）。培養に関しては、2つの系を開発した。このテーマには、７期生の栗山英子、10期生の西林知里らが取り組んだ。1つはこれまでのミリカップ膜上に組織を置いて培養する方法、これは細胞の変化を顕微鏡下で連続して追跡が可能である。もう一つの方法は、この組織の上からゲル(マトリゲル)をかけ、包み込んで培養する方法。この方法では、色素上皮が網膜組織そのものを構築･再生することが可能であり、ほぼ目の中の再生を再現しているとも言える。ただ、ゲル内部の変化であるので、切片を切ることによってのみ現象の把握が可能である。これらの培養系を用い、さらに方法に改良を加えながら、それぞれ独自の方向へ展開した。これらの研究は、原著論文として報告され、その後の研究の基礎となった。</p><p>　培養に関しては、さらに新しい系づくりを試みた。これまでの培養はいずれも色素上皮細胞が神経分化する系である。逆に、色素上皮としての性質を保ち続け、神経分化しない系があれば、分化誘導環境の解析に応用できる。この取り組みは17期生の西野なつ美が実施し、通常のプラスチック培養プレートで培養すると、ほとんど神経分化がおこらない、また色素上皮細胞は上皮性をいつまでも維持することなどが明らかになった。この問題は後述の細胞接着と遺伝子発現の問題ともつながる。</p><p><br></p><p><b>トランスジェニックツメカエルの開発</b></p><p>　培養手法を開発するとともに、カエルの遺伝子導入個体（トランスジェニック動物）の作成に取り組んだ。これには、修士修了後に大阪大学近藤研で手法を学んだ上田陽子（旧姓池上）が、技術支援員として復帰し、大いにその腕を見せてくれた。その結果、EF1a promoterにEGFP遺伝子をつなぐことにより遺伝子発現を直接可視化できるアフリカツメガエルのF1およびF2世代を作成することができた。アフリカツメガエルの世代交代は長い時間がかかる（年単位！）ので、何とも気の長い仕事になったが、これにより両生類網膜再生に初めてトランスジェニック技術が応用されたことになる。さらに、10期生の鍋島彩佳は、Rax promoterにEGFP遺伝子をつないだ個体を作成し、網膜再生に重要な鍵となる遺伝子Raxがどのような細胞環境で発現するのか、とくに細胞—基質間、および細胞—細胞間相互作用に注目して研究を進めた。これらの研究によって、どのような環境変化をきっかけにして色素上皮細胞が分化転換過程に入るのか、次第に明らかになってきた。これらの研究成果は、原著論文としてGenesisに報告された。</p><p>　たまたま旧知の名古屋大学尾張部克志さんがイモリ網膜のモノクローナル抗体を作成していると知り、それが再生に使えないか、を調べることにした。これは、11期生の護城明子と13期生の前島弘奈が取り組み、網膜除去後急速に抗体反応性が上昇するモノクローナル抗体を捕まえた。残念ながらその抗原性を明らかにするまでには至ってないが、そのサイズからPax6のサブタイプかもしれないと考えている。</p><p><br></p><p><b>再生の分子機構の提案</b></p><p>　先述の培養モデルの研究から、いくつかの再生モデルと言うべきアイデアが出された。それは、目の中の再生過程と器官培養の結果を比較検討する事により生まれたものである。目の中では、網膜を外科的に除去すると、色素上皮細胞は血管膜に移動し、そこで上皮を再形成する。この上皮組織は次第に神経上皮へと変わり、網膜が再生する。つまり、色素上皮細胞は、移動→上皮再形成→神経上皮形成というステップを経る。ミリカップ上での色素上皮細胞の振る舞いも、ある意味このステップを再現しているとも言える。つまり、培養片をミリカップ上に置くと、色素上皮細胞は培養片の周辺部から這いだし（移動し）、移動後上皮を再形成する。さらにその先で、上皮細胞間接着を失い、ばらばらになって神経細胞に分化する。この一連の過程を、上皮間の接着構造と網膜発生に必須の遺伝子発現を調べることによって、再生過程における細胞間コミュニケーションと再生遺伝子発現の問題として捉えようとしたのが、博士課程に復帰した上田陽子である。上田は同一の培養標本で、いくつものマーカーを同時に検出することにより、これらの対応関係を鮮やかに解明した。また、このような現象が実際に目の中の再生過程でも見られるのかどうかを、13期生の藤田悠里は詳細に観察した。培養での解析には、15期生の勅使河原利香も取り組み、ツメガエル2種(後述のネッタイツメガエル)の比較検討をおこなった。現時点では、細胞間連絡と分化転換の因果関係を問うことはまだむずかしいが、これらの成果は、再生ステップの細胞機構の問題に深く切り込んだ研究である。今後はこの因果関係を解明することが大きな問題として残されており、これによって再生の問題が格段にクリアになると思う。</p><p>　色素上皮細胞が分化転換し網膜細胞に分化する過程では、当然エピジェネティックな調節が予想される。いつどのような調節があるのか、これを知ることは再生ステップをより詳細に知るために重要であろう。卒研14期生の奧原絵菜は、この問題を奈良先端大の荻野ラボで研究した。特に、須藤則広さんには丁寧にご指導いただいた。</p><p>　もう一つの攻めるポイントは、再生開始のトリガーに焦点を絞ることである。つまり、網膜を外科的に除去すると網膜再生が開始する（色素上皮細胞が移動を始める）が、網膜を除かない限り、このような細胞の移動･再生は決しておこらない。網膜除去という操作がなぜ再生のトリガーになるのか、という問題である。この問題は、14期生の内藤華子が熱心に取り組んだ。培養での研究がヒントになり、作業仮説として次のように考えた。まず、外科手術によって網膜を除去すると、炎症性反応が脈絡膜内でおこり（脈絡膜は非常に血管の豊富な組織であるため）、その結果protease が活性化し、色素上皮細胞が基底膜から遊離する、と予想した。そこで、まず基質を分解する酵素群MMP (Matrix metalloproteinases)の発現が外科操作に伴いどのように変化するかをqPCRで調べたところ、24時間以内に極めて高いレベルに達することがわかった。培養下でも移動開始の細胞でMMPのｍRNAが高いレベルになる事、またMMP活性を阻害すると、移動がおこらず神経細胞分化もおこらないことなどが明らかになった。はたして炎症によってMMPの発現が誘導されるのかどうか、現在17期生の菅沼佑香里が抗炎症剤を用いて調べているところである。なお、MMPのPCRによる解析や細胞内局在の検出に関して、京都大学再生医学研究所の瀨原淳子さんのラボにご厄介になった。特に、佐藤貴彦さんにはたいへんお世話になた。</p><p><br></p><p><b>新しいツメガエル再生モデル（ネッタイツメガエル）の開発</b></p><p>　近年、ネッタイツメガエルが両生類の新しい実験モデルとして注目されている。アフリカツメガエルとは近縁でありながら、いくつもの利点をもち、最近では全ゲノム解読もされた。世代交代が早く、また二倍体であるため厳密な遺伝学が可能である。私たちは、将来の遺伝子導入個体の作成も視野に入れて、ネッタイツメガエルでも網膜が再生するのかどうかを確認しようとした。再生しなければ、研究の対象とはならないが、逆に、なぜ再生しないのかと問うことにも意味がある。このテーマには、12期生の三宅あゆ美が熱心に取り組んだ。これまで同様、網膜を全て除去したところ、やはりきれいな網膜再生が観察された。ところが、目の中の再生、器官培養での再生、いずれもアフリカツメガエルとは異なる、興味深い結果が得られた。再生の起源となるのは色素上皮ではなく、毛様体辺縁部の幹細胞である。この細胞群が急速に増殖し、新しい増殖帯を形成して網膜を分化する。培養下でも調べたが、目の中と同様に、色素上皮は神経細胞には分化しない。この観察の意味は大きい。なぜなら、哺乳類を含めほぼすべての動物の毛様体には幹細胞があると考えられる。従って、毛様体組織の幹細胞を何らかの方法で活性化させることにより哺乳類で再生誘導することももあながち夢だとは言い切れない。</p><p>　ネッタイツメガエルでは、アフリカツメガエルで観察された、色素上皮細胞の移動→上皮再形成→神経上皮形成というステップを経ず、上皮再形成がおこらない。これら2種の詳細な比較研究は、上田および勅使河原によって検討されている。</p><p>　なお、これまで色素上皮細胞の分化転換過程を重点的に解析してきたが、もう一つの再生起源細胞である毛様体辺縁部の幹細胞については、16期生の鈴木絢診が研究をおこなった。これには今後の問題として、例えば培養下での解析等が必要であると思う。</p>
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	]]></content></entry><entry><title><![CDATA[
目はどのようにして作られるのか]]></title><link rel="alternate" href="https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5962153/"></link><id>https://araki-lab.amebaownd.com/posts/5962153</id><summary><![CDATA[-複雑な構造をもつ目が脳と表皮からつくられる仕組み-研究テーマの設定まで　このテーマは、初期のニワトリ胚を用いて、目の発生メカニズムを明らかにしようとする取り組みである。荒木は、すでに京都府立医科大学でトリ胚操作法を使って松果体の発生学研究をおこなっていた。胚操作は発生学独自の手法であり、実験形態学を彷彿とさせる。奈良女では、器官発生研究では長い歴史をもつ目の発生に注目し、トリ胚操作を主要な実験手段として問題に取り組む事にした。　当初、具体的な研究テーマをどう設定するか、いろいろと悩んだが、胚操作が比較的やさしく、かつ、できるだけ若い胚のステージとして、眼胞形成期を選ぶことにした。そうすると、眼胞から眼杯形成の過程が対象となる。このステップは、目の形態形成を考える上でもっとも重要な時期でもある。この時期を扱った胚操作による先行研究を文献で調べてみると、少数であるが、いくつかの報告があった。そのいずれもが、網膜視神経から中脳視蓋への投射パターンに関するものであった。つまり、視神経投射の特異性がどのように決定されるのか、という問題である。眼胞を背腹、前後方向にひっくり返したときに、投射パターンがどのように変わるのかを調べることによって、いつ投射の特異性が決まるのかを調べる研究である。幸い、形態形成そのものに注目したものはなかった。　この時点で私に明確な問題設定ができていたわけではないが、直感的に、眼胞内に背—腹、前—後の軸（勾配）が形成されることが、目の発生に大きな意味をもつだろうと予想した。とくに背と腹は、形態形成上も明らかに違いがある。眼胞から眼杯形成の過程で、腹側には眼裂という構造（視神経や血管の通り道）ができる。この構造に注目して、眼胞の背と腹を逆転する実験を実施した。私が赴任する前に、私の研究室で卒業研究することを選んだ右衛門佐知子（研究室１期生）は、持ち前の緻密さ、器用さと粘りをいかんなく発揮し、この胚移植操作をおこなった。　右衛門佐の膨大な移植実験から次々と問題点が明らかになってきた。中でも、特定のステージ（10体節前後）で眼胞の背と腹の逆転移植をすると眼胞から眼杯への形態形成が進行しないこと（原始の目の状態）は大きな発見であった。これを私たちは、次のように解釈した。眼胞そのものが背と腹の極性を決めるのではなく、脳の背と腹の情報が眼胞に伝えられることによって、眼胞の背腹極性が決められる。このことをより詳しく調べるために、さらに困難な移植実験をおこなった。例えば、極性が脳から眼胞に伝わる際に、一定の時間が必要なはずで、より基部側を移植するか、より先端側を移植するかによって、これを示した。また、この一連の発生過程に関わると思われる転写因子の発現を組織内mRNA検出法(in situ hybridization)によって明らかにした。この実験作業は、奈良先端大の安田國雄さんの研究室でご指導をうけた。特に、Tbx5やPax2遺伝子は、背と腹のマーカーとして面白いパターン変化を示した。　右衛門佐による研究は、2002年に原著論文としてDevelopmental Biology誌に掲載され、そのアプローチのユニークさからも国際的にかなり注目された（高い被引用数）。特に、背と腹の軸形成から目の発生を見る見方は、これまでにない新しいものである。歴史的にも（100年近く）、また今でも、目の発生の捉え方は、基部—先端の軸で考えるのが一般に流布している見方である。表皮と脳の相互作用が目の発生を支配すると言う見方である。論文を投稿するたびに、この考え方とどう折り合いをつけるのか、いつもレビュワーの厳しい批評にさらされてきた。（この問題は、後述する）　その後の研究は、胚移植操作の難しさもあって、なかなか思うように進捗しない時期が続いた。しかし、本研究によって問題が明確に設定された。すなわち、脳の背と腹に由来する因子とは何か、またそれはいつどのようにして眼胞に伝えられるのか、これらの因子はどのようにして眼胞内の極性を決めるのか。シルバー変異の解析　眼胞発生に関連する問題として、以前から実施していた研究が一つある。それは、ウズラのSilver変異の解析である。京都府立医大で研究生として研究をおこなった山尾美香留も参加して、解析に当たった。ホモ型では、発生初期に目の色素上皮が網膜に発生運命を変える。それも後極の一部でだけ変わる。これは、網膜再生の問題を考える上でも面白い現象である。なぜなら両生類イモリの網膜再生では、色素上皮が網膜を再生するからである。両生類網膜再生は研究室のもう一つの研究テーマであったから（後述）、シルバー変異の解析は網膜再生にもつながると考えられた。　私たちは、Silver変異ウズラで、すべての色素上皮が網膜に変わらずに、後極の一部でだけ変化することに注目した。つまり、色素上皮を裏打ちする結合組織側にこの原因があるのではないかと考えた。この結合組織は脈絡膜とよばれ、神経堤細胞の移動によって発生する。しかもSilver変異は、体色（羽毛）が真っ白になる変異である。つまり神経堤に由来するメラノサイトに異常がある。そこで、変異ウズラの眼胞と野生型ウズラの眼胞を交換移植する実験を実施した。もし、眼胞背側に移動する神経堤を野生型に変えたときに、表現型がでなければ、原因が結合組織側にあると言える。この移植実験は2期生高野貴子がかなりサポートしてくれたおかげで、2002年に論文としてDevelopmental Biology誌に掲載された。同じ年に兵庫県立大学の餅井真さんがSilver変異の原因遺伝子がmitfである事を報告した。この一連の研究によって、さらに追求すべき重要な問題があることを認識していたが、変異ウズラの有精卵の供給が難しくなり，残念ながらこれ以上解析は進まなかった。なお、このSilver変異ウズラの研究は、当時大阪府立大学獣医学科にいた都築正起さんとの共同研究で、彼はその後広島大学に移り、ウズラ博士として有名である。彼との共同研究のHMM変異の研究は、まだデータをまとめ切れていない。視神経が迷子になる面白い表現型を示す。器官培養を導入して眼胞発生を研究　さて、次に明らかにすべき問題は、脳の背と腹に由来する因子とは何か、またそれはいつどのようにして眼胞に伝えられ、眼胞の背—腹極性を決めるのか、である。胚移植操作実験の難しさもあり、なかなか胚操作だけでは研究が進まない。そこで積極的に器官培養の系を開発することにした。これには、鍵山由香（３期生）を中心に、後藤田奈々香（4期生）が取り組んだ。具体的には、眼胞周囲の間葉組織に注目した。間葉組織は、眼胞の背側と腹側に分布し、それぞれ神経堤と前脊索中胚葉に由来すると考えられる。そこで、これらの周囲組織を眼胞から除去したのち、脳の背側半分または腹側半分と共培養して、眼胞の発生を調べた。脳組織と共培養することによって、脳に由来する因子の性質を明らかにしようという試みであった。結果は、なかなか面白いものであり、その後も胚移植操作と器官培養を併用して研究を進める事とになった。器官培養の結果、これまでの予想に違わず、脳由来の背側と腹側の因子が眼胞の発生を決めることが明らかになり、特に、背側因子が色素上皮発生に、腹側因子が網膜発生に重要である事が明らかになった。これらの結果は、原著論文として、2005年、Development Growth & Differentiation誌に掲載された。脳由来因子とその機能の追求を目指して　いよいよ、具体的な因子とその機能を明らかにする事を目的に研究を進めることになったが、これまた思うようには進まなかった。同時に、より神経堤に注目した研究を進めることにした。神経堤が眼胞発生にどんな意味があるのかを、胚操作実験で追求した。まず5期生岡田千春が眼胞背側に人工膜を挿入し、細胞や分子の移動を阻止できるかどうかを試みた。さらに10期生白土利枝は神経堤の除去を試みたが、眼胞にはかなり広範囲から神経堤が流入するため、神経堤細胞の眼胞への移動を完全に阻止することは困難であった。当時、すでに脳の頭部領域にシグナル分子BMPs、Wntsの存在が示されていたので、眼胞の背側領域を色素上皮に誘導する因子としてこれらシグナル分子の働きを胚操作や器官培養で示すことを試みた。Wntsはタンパクそのものの入手、取り扱いがむずかしいこともあり、BMPsで実験を開始した。また、神経堤を切除する事により眼胞発生がどのように影響を受けるのかを調べた。これらの問題には、8期生田村真弓さらに9期生門脇由佳らが取り組んだ。背側因子としてBMPを示唆する面白い結果が得られたものの、十分に安定した結果ではなく、最終的に博士学生の小林琢磨の実験に待たざるを得なかった。 眼胞内の領域特異性　少し見方を変えて、眼胞そのものを一部切除することによって発生への影響を調べてみることにした。これまでの研究から、眼胞の領域ごとに発生運命が異なることが示されてきた。従って、特定の部分を切除する事によってそれに対応する構造が発生しなくなることを示そうとした。この研究は、６期生の平島美紀がおこなった。腹側を切除した胚では、眼杯は形成されず、色素上皮性の袋（嚢胞状の構造、論文ではpigmented vesicleと呼んでいる）となる。これは予想されたことである一方、背側を切除すると、正常な眼杯形成を経て、正常な目になる。この解釈として、腹側眼胞に背側因子が再度作用し、背—腹の極性が再構築されたと考えられる。さらに切除領域を大きくして、眼胞の４分の１だけを残す実験をした。面白いことに、腹側前方部の４分の１だけでも正常な目に発生することが明らかになった。逆に、この部分を除去すると目の発生は停止する。眼胞の腹側前方部は、あたかも目の発生を指令する器官オーガナイザー？のような働きをしている。この領域にはシグナル因子FGF8が局在しており、これがいわばオーガナイザー分子であるとも言える。　平島らによるこの研究は、原著論文として2007年Developmental Biology誌に掲載された。大阪大学の近藤寿人さんのラボにはin situ hybridization等何かとお世話になった。この論文は、論文データベースBiology Faculty1000でも取り上げられ、古典的実験形態学手法によって謎を明らかにしたとして、’must read’と評価された。　当時、奈良先端大博士後期課程の学生であった小林琢磨は、特別研究学生としてD1秋から本研究室で研究を開始し、この腹側前方部の４分の１領域が胚の中で実際に目をつくることを移植実験でも示した。眼胞の背側４分の１領域を切除して、そこに腹側前方部の４分の１領域を移植する。つまりこの領域を２つもつ胚を作成したところ、それぞれが別々の完全な目を形成することを示した。つまり、この領域は眼胞内で再度背—腹極性が再構築され、目に発生したと言える。あらためて、目の発生研究の面白さを示した実験である。小林によるこの研究は、原著として2009年にDevelopment Growth & Differentiation誌に掲載された。背腹のシグナル分子の同定とその分子機能　さらに、小林はシグナル分子の働きを探るため、脳と眼胞の共培養および脳の背または腹側部分の単独培養とシグナル分子を組み合わせた培養を実施、シグナル伝達の薬理学的実験もおこなって、眼胞背側シグナルとしてBMP4を、腹側シグナルとしてFGF8を同定した。その上流には、脳由来シグナルが存在し、背側は不明（おそらくWnts）、腹側はShhを想定して実験をおこなった。その結果として、まず脳の背と腹のシグナルが存在し、これが眼胞内に背と腹のシグナル分子を誘導する、次に、これらのシグナルが、眼胞の背と腹側にそれぞれ特異的な転写因子の発現を誘導するとともに、反対側の遺伝子発現を抑制すると言う図式を提案した。これらの内容は、原著論文として、2010年にDevelopment Growth & Differentiation誌に掲載された。Astrid Vogelとの共同研究　先述のように、目の発生は眼胞と表皮との相互作用によって進行し、とくに表皮と接する眼胞の先端側と接しない基部側で発生運命が異なる、と言う考え方が支配的であった。その中で、私たちの背—腹の極性成立が眼胞発生に重要であると言う考え方に興味を示したグループがあった。すでに松果体研究などで共同研究を実施していたドイツのダルムシュタット工科大学Paul Layerのラボで新しい研究グループを立ち上げたAstrid Vogelである。彼女はすでに背側で発現するシグナルWntに注目して研究をおこなっていたが、トリ胚操作の実験でおこなうことを考えた。そこで、大学院生のJorg Steinfeldが奈良女の研究室に滞在し、実験を実施した。その後、12期生の牛島一恵が今度はAstridのグループに合流した。このような共同研究の結果、BMPおよびWntは、初期には表皮および眼胞内に存在し、次第に背側に局在するようになる。その結果、色素上皮の発生、および網膜の発生が進行する事を示した。Wntの作用については、13期生の亀水千鶴が胚を使った薬理学的なアプローチをおこなった。まだ問題として、眼胞内の背側シグナルがどのようにしてそこに局在するのか不明であるが、背側シグナルとしてのWntの役割を示した実験として意味が大きい。これらの研究は、原著論文として、Development誌に掲載された。目と脳の問題　眼胞は前脳胞が側方に突出した構造である。脳は背と腹の領域が全く異なる構造に発生する。そこで、前脳の背と腹の構造の違いがどのように決められるのか、これまでの眼胞での研究を下地にして考えることにした。脳の背と腹のシグナル、これはおそらく、WntとShhであろうが、これらは脳の背側領域、腹側領域の発生をどのように制御するのだろうか。特に、前脳から発生する大脳は、背側は皮質、腹側は基底核というように、非常に異なった形態と機能を持つ領域に発生する。そこで14期生唐岩藍翔梨は、器官培養の手法を用いてEmx1、Nkx2、Pax6に注目して取り組んだ。その結果、眼胞発生のシグナル制御とよく似た制御機構が示唆された。ただ、この問題は道半ばである。　さらに、現在進行中の研究であるが、目が脳の一部として発生を始めるときに、どれくらい特異化されているのか（脳か目かの選択はどのようにされるのか）について、いくらか新しい事実がわかってきた。これも、胚操作実験ならではの結果である。これは、現在15期生白浜美咲が取り組んでいる。まず眼胞の周囲組織を除去し、これを再び脳に戻す(脳と接ぎ木する)という困難な胚操作でこの問題にアプローチしている。このようにした眼胞は目ではなく脳に発生する。つまり、眼胞の周囲を覆う間葉組織には領域によって誘導能に違いがある事が示された。この問題も道半ばであるが、この実験事実は目の発生研究において大きな意味をもつと思う。目の発生と背腹の極性の考え方　最近（2014年）、目の発生に関して興味ある総説論文が発表された。著者Hyerらは、目の発生の古典的な見方、基部—先端極性説を強く主張してきたグループである。彼らのこれまでの論文では、私たちの研究は全く引用されず、無視された形になっていた。ところが、この総説では、私たちの研究をすべて引用し、背—腹極性の考え方を紹介している。まだ両方の考え方はうまく折り合いをつけてはいないが、私はうまく説明することは十分可能だと考えている。私自身が、さまざまな可能性を提案し、それを実験的に検討することはもう難しい状況であるが、これまでの成果を再度検討し、この問題を総説論文で議論したいと考えている。少なくとも、本研究室でこれまで実施してきた胚操作、胚移植実験による目の発生研究がきわめてユニークな研究である事は間違いない。たいていの研究は、まず発生過程においる遺伝子発現パターンを調べ、次に注目した遺伝子をつぶす、あるいは異所的に発現させる。そうして得られた結果から発生メカニズムを解釈するのが、現在の典型的な発生研究である。私たちが胚移植実験で示した予期せぬ結果は、目の発生の新しい見方を生んできた。今後も、このような技術が生かされ、分子生物学的アプローチと組み合わさってより新しい成果につながるよう期待をもっている。目と松果体を比較してみる　終わりに、これまでの成果を松果体発生と比較して、簡単に視覚器発生をまとめてみたい。(松果体研究の紹介は最後に)　目と松果体は、いわば姉妹器官である。形態形成上の大きな違いは、目は陥入し眼杯になるが、松果体は陥入せず袋状のままである。眼胞もある種の操作を施すと袋状のままで眼杯にならない。これまで述べてきたように、背と腹の両方のシグナルがあってこそ眼杯形成へ至る。松果体は最も背側に位置する器官であるから背側シグナルのみを受け、腹側シグナルを欠く。ナメクジウオでは腹側シグナルSHHがなく、正中部に1個の目（Frontal eye）をもつだけである。このように考えてみると、目は、実に良き場所を選んだものだと、あらためてその発生の面白さに思い至る。この考えからすると、松果体を目に変えることも可能なはずであるが、これまた、もはや実験する機会はないだろう。　　最後に、ずっと頭から離れない疑問を記してこの項目を終わりたい。脊椎動物は、なぜ無脊椎型の(タコ型の)目の発生を放棄したのだろうか。かつてこれほど完璧な目をつくる方法をもっていたのにもかかわらず…..]]></summary><author><name>araki.lab2019</name></author><published>2019-03-28T09:12:01+00:00</published><updated>2019-05-30T08:11:59+00:00</updated><content type="html"><![CDATA[
		<div>
			<p><b>-複雑な構造をもつ目が脳と表皮からつくられる仕組み-<br></b></p><p><br></p><p><b>研究テーマの設定まで</b></p><p>　このテーマは、初期のニワトリ胚を用いて、目の発生メカニズムを明らかにしようとする取り組みである。荒木は、すでに京都府立医科大学でトリ胚操作法を使って松果体の発生学研究をおこなっていた。胚操作は発生学独自の手法であり、実験形態学を彷彿とさせる。奈良女では、器官発生研究では長い歴史をもつ目の発生に注目し、トリ胚操作を主要な実験手段として問題に取り組む事にした。</p><p>　当初、具体的な研究テーマをどう設定するか、いろいろと悩んだが、胚操作が比較的やさしく、かつ、できるだけ若い胚のステージとして、眼胞形成期を選ぶことにした。そうすると、眼胞から眼杯形成の過程が対象となる。このステップは、目の形態形成を考える上でもっとも重要な時期でもある。この時期を扱った胚操作による先行研究を文献で調べてみると、少数であるが、いくつかの報告があった。そのいずれもが、網膜視神経から中脳視蓋への投射パターンに関するものであった。つまり、視神経投射の特異性がどのように決定されるのか、という問題である。眼胞を背腹、前後方向にひっくり返したときに、投射パターンがどのように変わるのかを調べることによって、いつ投射の特異性が決まるのかを調べる研究である。幸い、形態形成そのものに注目したものはなかった。</p><p>　この時点で私に明確な問題設定ができていたわけではないが、直感的に、眼胞内に背—腹、前—後の軸（勾配）が形成されることが、目の発生に大きな意味をもつだろうと予想した。とくに背と腹は、形態形成上も明らかに違いがある。眼胞から眼杯形成の過程で、腹側には眼裂という構造（視神経や血管の通り道）ができる。この構造に注目して、眼胞の背と腹を逆転する実験を実施した。私が赴任する前に、私の研究室で卒業研究することを選んだ右衛門佐知子（研究室１期生）は、持ち前の緻密さ、器用さと粘りをいかんなく発揮し、この胚移植操作をおこなった。</p><p>　右衛門佐の膨大な移植実験から次々と問題点が明らかになってきた。中でも、特定のステージ（10体節前後）で眼胞の背と腹の逆転移植をすると眼胞から眼杯への形態形成が進行しないこと（原始の目の状態）は大きな発見であった。これを私たちは、次のように解釈した。眼胞そのものが背と腹の極性を決めるのではなく、脳の背と腹の情報が眼胞に伝えられることによって、眼胞の背腹極性が決められる。このことをより詳しく調べるために、さらに困難な移植実験をおこなった。例えば、極性が脳から眼胞に伝わる際に、一定の時間が必要なはずで、より基部側を移植するか、より先端側を移植するかによって、これを示した。また、この一連の発生過程に関わると思われる転写因子の発現を組織内mRNA検出法(in situ hybridization)によって明らかにした。この実験作業は、奈良先端大の安田國雄さんの研究室でご指導をうけた。特に、Tbx5やPax2遺伝子は、背と腹のマーカーとして面白いパターン変化を示した。</p><p>　右衛門佐による研究は、2002年に原著論文としてDevelopmental Biology誌に掲載され、そのアプローチのユニークさからも国際的にかなり注目された（高い被引用数）。特に、背と腹の軸形成から目の発生を見る見方は、これまでにない新しいものである。歴史的にも（100年近く）、また今でも、目の発生の捉え方は、基部—先端の軸で考えるのが一般に流布している見方である。表皮と脳の相互作用が目の発生を支配すると言う見方である。論文を投稿するたびに、この考え方とどう折り合いをつけるのか、いつもレビュワーの厳しい批評にさらされてきた。（この問題は、後述する）</p><p>　その後の研究は、胚移植操作の難しさもあって、なかなか思うように進捗しない時期が続いた。しかし、本研究によって問題が明確に設定された。すなわち、脳の背と腹に由来する因子とは何か、またそれはいつどのようにして眼胞に伝えられるのか、これらの因子はどのようにして眼胞内の極性を決めるのか。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>シルバー変異の解析</b></p><p>　眼胞発生に関連する問題として、以前から実施していた研究が一つある。それは、ウズラのSilver変異の解析である。京都府立医大で研究生として研究をおこなった山尾美香留も参加して、解析に当たった。ホモ型では、発生初期に目の色素上皮が網膜に発生運命を変える。それも後極の一部でだけ変わる。これは、網膜再生の問題を考える上でも面白い現象である。なぜなら両生類イモリの網膜再生では、色素上皮が網膜を再生するからである。両生類網膜再生は研究室のもう一つの研究テーマであったから（後述）、シルバー変異の解析は網膜再生にもつながると考えられた。</p><p>　私たちは、Silver変異ウズラで、すべての色素上皮が網膜に変わらずに、後極の一部でだけ変化することに注目した。つまり、色素上皮を裏打ちする結合組織側にこの原因があるのではないかと考えた。この結合組織は脈絡膜とよばれ、神経堤細胞の移動によって発生する。しかもSilver変異は、体色（羽毛）が真っ白になる変異である。つまり神経堤に由来するメラノサイトに異常がある。そこで、変異ウズラの眼胞と野生型ウズラの眼胞を交換移植する実験を実施した。もし、眼胞背側に移動する神経堤を野生型に変えたときに、表現型がでなければ、原因が結合組織側にあると言える。この移植実験は2期生高野貴子がかなりサポートしてくれたおかげで、2002年に論文としてDevelopmental Biology誌に掲載された。同じ年に兵庫県立大学の餅井真さんがSilver変異の原因遺伝子がmitfである事を報告した。この一連の研究によって、さらに追求すべき重要な問題があることを認識していたが、変異ウズラの有精卵の供給が難しくなり，残念ながらこれ以上解析は進まなかった。なお、このSilver変異ウズラの研究は、当時大阪府立大学獣医学科にいた都築正起さんとの共同研究で、彼はその後広島大学に移り、ウズラ博士として有名である。彼との共同研究のHMM変異の研究は、まだデータをまとめ切れていない。視神経が迷子になる面白い表現型を示す。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>器官培養を導入して眼胞発生を研究</b></p><p>　さて、次に明らかにすべき問題は、脳の背と腹に由来する因子とは何か、またそれはいつどのようにして眼胞に伝えられ、眼胞の背—腹極性を決めるのか、である。胚移植操作実験の難しさもあり、なかなか胚操作だけでは研究が進まない。そこで積極的に器官培養の系を開発することにした。これには、鍵山由香（３期生）を中心に、後藤田奈々香（4期生）が取り組んだ。具体的には、眼胞周囲の間葉組織に注目した。間葉組織は、眼胞の背側と腹側に分布し、それぞれ神経堤と前脊索中胚葉に由来すると考えられる。そこで、これらの周囲組織を眼胞から除去したのち、脳の背側半分または腹側半分と共培養して、眼胞の発生を調べた。脳組織と共培養することによって、脳に由来する因子の性質を明らかにしようという試みであった。結果は、なかなか面白いものであり、その後も胚移植操作と器官培養を併用して研究を進める事とになった。器官培養の結果、これまでの予想に違わず、脳由来の背側と腹側の因子が眼胞の発生を決めることが明らかになり、特に、背側因子が色素上皮発生に、腹側因子が網膜発生に重要である事が明らかになった。これらの結果は、原著論文として、2005年、Development Growth &amp; Differentiation誌に掲載された。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>脳由来因子とその機能の追求を目指して</b></p><p>　いよいよ、具体的な因子とその機能を明らかにする事を目的に研究を進めることになったが、これまた思うようには進まなかった。同時に、より神経堤に注目した研究を進めることにした。神経堤が眼胞発生にどんな意味があるのかを、胚操作実験で追求した。まず5期生岡田千春が眼胞背側に人工膜を挿入し、細胞や分子の移動を阻止できるかどうかを試みた。さらに10期生白土利枝は神経堤の除去を試みたが、眼胞にはかなり広範囲から神経堤が流入するため、神経堤細胞の眼胞への移動を完全に阻止することは困難であった。当時、すでに脳の頭部領域にシグナル分子BMPs、Wntsの存在が示されていたので、眼胞の背側領域を色素上皮に誘導する因子としてこれらシグナル分子の働きを胚操作や器官培養で示すことを試みた。Wntsはタンパクそのものの入手、取り扱いがむずかしいこともあり、BMPsで実験を開始した。また、神経堤を切除する事により眼胞発生がどのように影響を受けるのかを調べた。これらの問題には、8期生田村真弓さらに9期生門脇由佳らが取り組んだ。背側因子としてBMPを示唆する面白い結果が得られたものの、十分に安定した結果ではなく、最終的に博士学生の小林琢磨の実験に待たざるを得なかった。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>&nbsp;眼胞内の領域特異性</b></p><p>　少し見方を変えて、眼胞そのものを一部切除することによって発生への影響を調べてみることにした。これまでの研究から、眼胞の領域ごとに発生運命が異なることが示されてきた。従って、特定の部分を切除する事によってそれに対応する構造が発生しなくなることを示そうとした。この研究は、６期生の平島美紀がおこなった。腹側を切除した胚では、眼杯は形成されず、色素上皮性の袋（嚢胞状の構造、論文ではpigmented vesicleと呼んでいる）となる。これは予想されたことである一方、背側を切除すると、正常な眼杯形成を経て、正常な目になる。この解釈として、腹側眼胞に背側因子が再度作用し、背—腹の極性が再構築されたと考えられる。さらに切除領域を大きくして、眼胞の４分の１だけを残す実験をした。面白いことに、腹側前方部の４分の１だけでも正常な目に発生することが明らかになった。逆に、この部分を除去すると目の発生は停止する。眼胞の腹側前方部は、あたかも目の発生を指令する器官オーガナイザー？のような働きをしている。この領域にはシグナル因子FGF8が局在しており、これがいわばオーガナイザー分子であるとも言える。</p><p>　平島らによるこの研究は、原著論文として2007年Developmental Biology誌に掲載された。大阪大学の近藤寿人さんのラボにはin situ hybridization等何かとお世話になった。この論文は、論文データベースBiology Faculty1000でも取り上げられ、古典的実験形態学手法によって謎を明らかにしたとして、’must read’と評価された。</p><p>　当時、奈良先端大博士後期課程の学生であった小林琢磨は、特別研究学生としてD1秋から本研究室で研究を開始し、この腹側前方部の４分の１領域が胚の中で実際に目をつくることを移植実験でも示した。眼胞の背側４分の１領域を切除して、そこに腹側前方部の４分の１領域を移植する。つまりこの領域を２つもつ胚を作成したところ、それぞれが別々の完全な目を形成することを示した。つまり、この領域は眼胞内で再度背—腹極性が再構築され、目に発生したと言える。あらためて、目の発生研究の面白さを示した実験である。小林によるこの研究は、原著として2009年にDevelopment Growth &amp; Differentiation誌に掲載された。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>背腹のシグナル分子の同定とその分子機能</b></p><p>　さらに、小林はシグナル分子の働きを探るため、脳と眼胞の共培養および脳の背または腹側部分の単独培養とシグナル分子を組み合わせた培養を実施、シグナル伝達の薬理学的実験もおこなって、眼胞背側シグナルとしてBMP4を、腹側シグナルとしてFGF8を同定した。その上流には、脳由来シグナルが存在し、背側は不明（おそらくWnts）、腹側はShhを想定して実験をおこなった。その結果として、まず脳の背と腹のシグナルが存在し、これが眼胞内に背と腹のシグナル分子を誘導する、次に、これらのシグナルが、眼胞の背と腹側にそれぞれ特異的な転写因子の発現を誘導するとともに、反対側の遺伝子発現を抑制すると言う図式を提案した。これらの内容は、原著論文として、2010年にDevelopment Growth &amp; Differentiation誌に掲載された。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>Astrid Vogelとの共同研究</b></p><p>　先述のように、目の発生は眼胞と表皮との相互作用によって進行し、とくに表皮と接する眼胞の先端側と接しない基部側で発生運命が異なる、と言う考え方が支配的であった。その中で、私たちの背—腹の極性成立が眼胞発生に重要であると言う考え方に興味を示したグループがあった。すでに松果体研究などで共同研究を実施していたドイツのダルムシュタット工科大学Paul Layerのラボで新しい研究グループを立ち上げたAstrid Vogelである。彼女はすでに背側で発現するシグナルWntに注目して研究をおこなっていたが、トリ胚操作の実験でおこなうことを考えた。そこで、大学院生のJorg Steinfeldが奈良女の研究室に滞在し、実験を実施した。その後、12期生の牛島一恵が今度はAstridのグループに合流した。このような共同研究の結果、BMPおよびWntは、初期には表皮および眼胞内に存在し、次第に背側に局在するようになる。その結果、色素上皮の発生、および網膜の発生が進行する事を示した。Wntの作用については、13期生の亀水千鶴が胚を使った薬理学的なアプローチをおこなった。まだ問題として、眼胞内の背側シグナルがどのようにしてそこに局在するのか不明であるが、背側シグナルとしてのWntの役割を示した実験として意味が大きい。これらの研究は、原著論文として、Development誌に掲載された。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>目と脳の問題</b></p><p>　眼胞は前脳胞が側方に突出した構造である。脳は背と腹の領域が全く異なる構造に発生する。そこで、前脳の背と腹の構造の違いがどのように決められるのか、これまでの眼胞での研究を下地にして考えることにした。脳の背と腹のシグナル、これはおそらく、WntとShhであろうが、これらは脳の背側領域、腹側領域の発生をどのように制御するのだろうか。特に、前脳から発生する大脳は、背側は皮質、腹側は基底核というように、非常に異なった形態と機能を持つ領域に発生する。そこで14期生唐岩藍翔梨は、器官培養の手法を用いてEmx1、Nkx2、Pax6に注目して取り組んだ。その結果、眼胞発生のシグナル制御とよく似た制御機構が示唆された。ただ、この問題は道半ばである。</p><p>　さらに、現在進行中の研究であるが、目が脳の一部として発生を始めるときに、どれくらい特異化されているのか（脳か目かの選択はどのようにされるのか）について、いくらか新しい事実がわかってきた。これも、胚操作実験ならではの結果である。これは、現在15期生白浜美咲が取り組んでいる。まず眼胞の周囲組織を除去し、これを再び脳に戻す(脳と接ぎ木する)という困難な胚操作でこの問題にアプローチしている。このようにした眼胞は目ではなく脳に発生する。つまり、眼胞の周囲を覆う間葉組織には領域によって誘導能に違いがある事が示された。この問題も道半ばであるが、この実験事実は目の発生研究において大きな意味をもつと思う。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>目の発生と背腹の極性の考え方</b></p><p>　最近（2014年）、目の発生に関して興味ある総説論文が発表された。著者Hyerらは、目の発生の古典的な見方、基部—先端極性説を強く主張してきたグループである。彼らのこれまでの論文では、私たちの研究は全く引用されず、無視された形になっていた。ところが、この総説では、私たちの研究をすべて引用し、背—腹極性の考え方を紹介している。まだ両方の考え方はうまく折り合いをつけてはいないが、私はうまく説明することは十分可能だと考えている。私自身が、さまざまな可能性を提案し、それを実験的に検討することはもう難しい状況であるが、これまでの成果を再度検討し、この問題を総説論文で議論したいと考えている。少なくとも、本研究室でこれまで実施してきた胚操作、胚移植実験による目の発生研究がきわめてユニークな研究である事は間違いない。たいていの研究は、まず発生過程においる遺伝子発現パターンを調べ、次に注目した遺伝子をつぶす、あるいは異所的に発現させる。そうして得られた結果から発生メカニズムを解釈するのが、現在の典型的な発生研究である。私たちが胚移植実験で示した予期せぬ結果は、目の発生の新しい見方を生んできた。今後も、このような技術が生かされ、分子生物学的アプローチと組み合わさってより新しい成果につながるよう期待をもっている。</p><p data-placeholder=""><br></p><p><b>目と松果体を比較してみる</b></p><p>　終わりに、これまでの成果を松果体発生と比較して、簡単に視覚器発生をまとめてみたい。(松果体研究の紹介は最後に)</p><p>　目と松果体は、いわば姉妹器官である。形態形成上の大きな違いは、目は陥入し眼杯になるが、松果体は陥入せず袋状のままである。眼胞もある種の操作を施すと袋状のままで眼杯にならない。これまで述べてきたように、背と腹の両方のシグナルがあってこそ眼杯形成へ至る。松果体は最も背側に位置する器官であるから背側シグナルのみを受け、腹側シグナルを欠く。ナメクジウオでは腹側シグナルSHHがなく、正中部に1個の目（Frontal eye）をもつだけである。このように考えてみると、目は、実に良き場所を選んだものだと、あらためてその発生の面白さに思い至る。この考えからすると、松果体を目に変えることも可能なはずであるが、これまた、もはや実験する機会はないだろう。　</p><p>　最後に、ずっと頭から離れない疑問を記してこの項目を終わりたい。脊椎動物は、なぜ無脊椎型の(タコ型の)目の発生を放棄したのだろうか。かつてこれほど完璧な目をつくる方法をもっていたのにもかかわらず…..</p>
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